山科 颯太郎 選手へのインタビュー ブレイバーズ通信 2022年6月号
”イップス”からの脱却
4月15日(金)の関西独立リーグ公式戦。兵庫ブレイバーズは開幕戦から勝ち星なしの4連敗。何としてでも、今季初勝利をつかみ取りたい一戦だった。
1回表、5番梶木が1アウト満塁からレフト前へタイムリーを放ち、ブレイバーズは2点を先制した。先発投手の式田は、打たせて取るピッチングで五回を無失点に抑えた。6回には、変わった染矢が相手打線を無失点に抑える好リリーフ。
そして7回裏、ブレイバーズの2点リードで迎えたこの回、マウンドに上がったのは三年目の山科颯太郎。気迫のこもった投球で、相手チームの先頭打者から見逃し三振を奪う。
その後の小田原選手に四球を与えるも、次の打者をダブルプレーに仕留めた。1イニングを3人で終わらせた山科の投球は、相手に流れを渡さなかった。
9回裏、大ベテランの久保が楽々と試合を終わらせ、3対1でブレイバーズは今季初勝利。歓喜の輪の中に、この日、自身の登板では久々の無失点に抑えた山科がいた。
山科選手へのインタビュー
「(無失点に抑えて)正直泣きそうだった」
――イップスに苦しんでいた山科投手は、制球が定まらずに投げては失点することの繰り返し。久々の零封ピッチングは大きな自信になったのでは?
(山科)ずっと苦しんでいた中でも、何とか諦めずにやってきたかいがありました。正直なところ泣きそうでしたね。チームの今季初勝利に貢献できたことも嬉しかったですし。橋本監督からも「ナイスピッチング!」と声をかけていただき、感無量でした。
登板試合で無失点に抑えたのは、およそ1年半ぶり(※2020年7月25日の公式戦以来)じゃないのかな。2020年の夏頃からストライクが入らなくなりました。それまでは制球には自信があったのですが、急にダメになりました。それ以降の試合はろくにアウトもとれず、大量失点を重ねました。本当に辛かった。
サイドスローへの転向が功を奏す
――制球難は改善されましたか?
(山科)投球フォームを変えたことで良くなったと思います。今まではオーバースロー(上手投げ)だったフォームを、サイドスロー(横手投げ)へと大きく修正しました。
とても勇気がいる決断でした。でもオフシーズンに試してみたサイドスローが、意外と自分にフィットしたことが決め手になりました。トレーナーの方もその決断を後押ししてくれました。
――サイドスローに転向後はどうなりましたか?
(山科)最速144キロと球速はあまり落ちていません。これが僕の自信となりましたね。まだ転向してから数ヶ月しかたっていないので、もっと伸びると思います。
対戦するバッターも、このフォームの方が打ちづらいでしょうね。かつての迫力はなくなったように思われるかもしれませんが、自分の中ではかなり手ごたえを感じています。
――参考にしている投手はいらっしゃいますか?
(山科)読売ジャイアンツの大勢投手です。同じ横手投げなので。ユーチューブに上がっている動画を分析しています。大勢投手は常時150キロを超えるストレートを投げます。僕もそれぐらいの球速を目指していますね。
「ブレイバーズには、スカウトが頻繁に来てくださる」
――この「兵庫ブレイバーズ」には、どういった経緯で入団されたのですか?
(山科)本来は社会人チームに進む予定でした。でもオリックスからプロテストの話をいただきました。悩みましたが、できるだけ若い年齢でプロ入りしたいという強い気持ちもあり、社会人チームは断りました。
プロテストでは最終段階まで進みましたが、ドラフト会議では指名漏れに終わりました。
他に選択肢がない中、ブレイバーズから声をかけていただいたので入団しました。指名漏れの時の悔しさは、今でも原動力になっていますね。
――今季でブレイバーズに所属して3年目となりますが。
(山科)給料が出ないのは大変ですが、スカウトの方々がよく来てくださるので、良い環境だなとは思っています。キッピースタジアムは空気が綺麗でかなり気に入っている球場です。スポーツジムと整骨院が無料で利用できる点もとても良いですね。
「セーブ王を狙いたい」
――今季はどのような場面で登板する予定ですか?
(山科)これからも中継ぎとして、チームのリードを守っていく起用になると思います。久保さんがいないとき(※久保投手は平日のみの参加)には抑えを任されます。
昨季は点差が開いた場面じゃないと投げさせてもらえませんでした。だけど日々の練習や試合の中で、首脳陣の信頼を勝ち取り、このポジションを掴むことができました。
――今季の目標成績は?
(山科)最優秀防御率かセーブ王のタイトル、どちらかを獲得したいです。ホールドよりセーブの方がかっこいい!気がするので(笑)。
「今季は背水の陣で臨む」
――柏木選手は高校(九州文化学園高等学校)時代から同じチームメートですが。
(山科)普段から良く喋りますね。プロテストも一緒に受けに行きましたし。高校時代の後輩である川本選手と山崎選手も、このチームに在籍しています。川本選手は、僕がこのチームに誘いました。
――以前、山崎選手を取材させていただいた際(ブレイバーズ通信2021年10月号)には、「山科先輩には普段からお世話になっている」と感謝の言葉を口にされていました。
(山科)素敵な後輩ですね(笑)。高校時代は寮で同部屋だったので、縁は深いと思います。
――ファンの皆様へメッセージを。
(山科)NPB入りを果たすために活躍して、リーグ優勝を果たしたいです。このチームに在籍するのは今季限りだと思っています。背水の陣で臨むラストシーズン、ぜひご期待ください。
(このインタビューは2022年4月20日に行われました)
その後も絶好調の山科投手!!
インタビュー後に行われた4月22日の公式戦では、制球を乱しはしたが、相手に一本のヒットも打たせない投球。40球を投げ抜き、二回を無失点に抑えた。
5月2日の公式戦では、1点リードの9回裏に登板。コントロールも安定し、三振も奪うなど圧巻のピッチング。敵打線をリズム良く三者凡退に抑え、有言実行の今季初セーブをあげた。四死球を与えない登板は久々のこととだ。
長いトンネルを抜けたことは、誰の目にも明らかだ!
居残り練習に励む松田選手
4月20日(水)、アメニスキッピースタジアムで行われた全体練習。午後二時の練習終了後も、黙々とティーバッティングに取り組んでいた選手がいた。松田修吏内野手(22)だ。
昨季は規定未達ながら、3割6分2厘の高打率をマークした松田選手。しかし「ボジション争いはし烈」と語り、少しも慢心する所がない。
「来年はさらに上のステージで野球をするために、今からしっかりやっておく」と話し、取材に応じる際中にもバットは止まらなかった。
「野球が好き」とこのスポーツへの愛を口にしながらも、「だからこそ成功してたくさんお金を稼ぎたい」と言い、笑ってみせた。5月3日現在、5試合連続ヒット中と好調の松田選手。その夢を叶える日はそう遠くないのかもしれない。
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