「ケツ追放~ケツスキルしかない僕、だけど実は全能スキルで最強でした。今更僕のケツに縋り付いてももう遅い~」#02

「お前は追放だ!!!!!!!!!!」

ダンジョン内に怒号が響き渡る。
僕……ヒョウガ・コクートシュは面を食らっていた。
僕は、先刻パーティに誘ってきた剣士、ホージルに
早々にリストラ宣言をされてしまったのだった。

「え……な、なんで……いくらなんでも早計すぎるんじゃ……」

僕の言葉を遮りチンピラ風の探検家、
ホルアナが口を開く。

「お前さんよぉ、いくらいいケツをしていようがなァ……
ダンジョンでケツを振る以外できねェヤツはお呼びじゃねえんだよ!」

紅一点の魔法使い、プリッツも続く。

「あのね。アンタの役割は前衛。敵を引きつけ
私たちを戦いやすくする立場なワケさ。それがなんだい?
お尻を振るだけでクソの役にも立ちゃしない。
さっきの戦闘は何さ。忘れたとは言わせないよ!」

王都にいくためにこの3人パーティに協力することになった僕は、
まずは3人の目的である近場のダンジョン、
「クリノファナ迷宮」の攻略に手を貸すこととなった。
ダンジョンの入り口まもなく、即座にモンスターと邂逅。
戦闘に相成ったわけだが、僕は与えられた役割……
前衛での戦闘を必死にこなそうとしていた。
しかし僕の持つスキルは「ケツ強化」のみ。
具体的には何をすればいいのかもわからない。
この世界にきたばかりで当然装備品にも恵まれておらず、
僕にできるのは奇跡を願いケツを振ることだけだった。

それが、3人の逆鱗に触れた。
そして今に至る、というわけだ。
僕はパーティから追放された。
尻を蹴とばされるというのはこういう気分か。
また僕は、振出しに戻ってしまった。

「ケツ強化……何なのか結局わからなかったな」

一文無しのすかんびん。
綺麗で形の良いお尻以外持っていない僕に、
未知の世界は広く、孤独すぎた。
追い出された僕はだだっ広い草原で行く当てもなく
さまよう他なかった……。


異世界にきて初めての夜がきた。
寝るための道具もなく、身の安全を守るための武器もない。
いつ魔物に襲われるかもわからない不安と恐怖の中、
僕はお尻を震わせていた。
ぷるぷると小動物にように震える僕のお尻。
こんなにも心細いものか。
僕は泣きそうだった。

しかし、しばらくお尻を震わせていると、突然脳内に声が響き渡った。
女神タレッタのそれによく似た声は、ぼくにこう告げた。

「ケツレベルUP 獲得スキルを選んでください」
①ケツブリザードLv1
ケツからつららを三本発射する
②ケツサンダーLv1
ケツから一直線に飛ぶ電流を放つ
③ケツリジェネレーションLv1
自動的にケツを回復する

「これは……一体?」

三択を突き付けられた僕はとりあえず疲れ切ったお尻を癒したかったため、
ケツリジェネレーションを選択した。
するとどうだろう。即効性はないが、確かにじわじわと
お尻が癒されていく感覚があった。

「もしかして、僕がお尻を今日一日ずっと揺らしていたから
お尻のレベルがアップしたのか?」

ということは、ケツ強化……とは、
僕がお尻を活用すればするほど経験値がたまり、
お尻が成長していく……ということか?
僕は絶望的だった現状に一筋の光を見た気がした。

「この調子で……お尻を使い続ければ、
僕のお尻は開発され、拡張されていく……!?」

それからの僕は、ただひたすらにお尻を鍛えた。
一日1万回感謝のケツ振り。
魔物が近づこうものならお尻で全力の威嚇をし、
そもそもの戦闘の開始を許さなかった。
ひたすら、ひたすら尻を振る日々。
わき目もふらず、よそ見もせず。
このお尻を昇華すること。
それだけに日々邁進した。

レベルアップを重ねるごとに、法則性があることがわかった。
まず、レベルが上がるごとに三択が発生するということ。
どういったケツスキルを手に入れるか。
攻撃的なスキルもあれば、永続的にお尻を強化するスキルもある。
以前手に入れたスキルに更に磨きをかける、といった選択肢が
発生したり。時にこの世界の通貨をお尻から出すことができる
選択肢も発生した。とても疲れていた時は、
純粋に回復をする選択肢もでてきたこともあった。
更に、同時に得られるケツポイントが一定値溜まることで、
お尻のパラメータをあげることもできた。

「最初は使えないと思ったこのスキル……
この世界で生きていく上で……使えるぞ!」

僕は強くなった。
あの時の追放された苦しみ、悲しみをバネに。
敗北を知った。苦渋の味も、辛酸の味も知った。
だから、それを糧に上に行ける。
今よりも高いステージへ。
数週間がたった。
僕は……強くなった。



ヒョウガ・コクートシュ 
~ステータス~
HP(ヒップポイント):SSS
パワー:F-
ガード:E
スピード:B
マジック:F-

~スキル~
-ケツ強化-
敵を倒すことで獲得できるケツ験値で得られるポイントを
ケツに振ることができる。それによってケツが強くなる。

~ケツステータス~
ケツリジェネレーションLv3
ケツの回復速度を速める。
ケツバキュームLv3
周辺のアイテムをケツに吸い込む。
ケツレベルアッパーLv5
ケツのレベルUP速度を速める。
ケツパフュームLv4
ケツからいい匂いをさせる。
ケツラックLv3
稀にケツからいいアイテムが落ちる。
ケツコンパスLv2
ケツの向いている方角がどちらかわかる。
更にLv2効果で目的地の大体の方角がわかる。





十分だ。
かなり僕のお尻に磨きはかかった。
今なら、この草原を突破できる。
僕はお尻を震わせながら、強く大地を踏みしめた。
これが僕のジャイアントステップ。
見さらせ、世界。ジャイアントヒップ。
今、本当の意味で僕の旅が始まる。
目指すは王都コシューヴェン。

僕は早速、手に入れたばかりのスキル、
ケツコンパスを使った。
お尻を突き出すと僕のお尻から矢印が飛び出す。
磁力のようなものにひっぱられ、僕のお尻は自然と
目的地の方角を指した。
目指すは東。
尻が指さすその先へ。
僕は方角を間違わないよう、尻を突き出したまま後ろ向きに歩き出した。

第二章「尻さす先へ」 ──END

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