今でもあれは夢だったんじゃないかって時々思うんだけど、
俺も昔変な心霊体験したことあるわ。
当時俺、結構ブラックな企業に勤めてて。
幸い大体は家には帰れるレベルだったんだけど、
その日も終電に間に合うか間に合わないかっていう
めっちゃギリギリな時間に退社したんだよねw
(ちなみに当たり前のようにサビ残w)
もう俺ヘトヘトだったんだけど、会社で寝るのと
家で寝るのじゃ大違いだからさ。
近くにホテルとかもないし、ともかく電車に
乗りたかったんだよね。超ダッシュで駅まで走って。
片手にスマホもってさ、ちらちら時間確認しながら。
「あ~、駄目だこれ、間に合わないな」って。
駅につくころには終電から2分くらいはすぎちゃうなって。
でも、事故とかで遅延しててワンチャン乗れるかもしれないからさ。
諦めずに駅まで向かったわけ。


「ビンゴ!」って思った。
電車がまだ駅のホームにとまっててさ、もうそっからは
既に息切れしてるのに全力ダッシュw
今思うと走ってここまで疲れてたら
会社で寝たほうがマシだったんじゃねーのってくらい。
でもその甲斐あってなんとか乗れたんだよね。
終電だろうし人もいなくてさ、周りも気にせず座席におもっきり
ダイブしたのよ。で、俺が乗って間もなく電車のドアが閉まってさ。
マジであの時は神ってると思った。
あとは俺んち終点だから寝てればあっという間につくし、
ぐっすり寝かせてもらいますか~なんて思ってたんだけどさ。
走り始めてすぐ、車内アナウンスを聞いて一瞬耳を疑ったんだよね。

「次はこうもん、こうもん。お出口は下側です」


当然だけど、「こうもん」なんて駅、ないんだよね。
あとから調べたんだけどそんな駅、存在しなかった。
しかもさ、お出口は左側~とか、右側~ならわかるけど、
下側って言ったんだよね。確かに。
俺もめちゃくちゃ疲れてたから最初は変だなって思って、
逆側の電車にでも乗っちゃったんじゃないかと外の景色を見てみたんよ。
でも、外の景色はいつもと変わんない、いつも通りの景色なのよ。
ただ、もうひとつ不思議なことがあって。
俺の乗った車両、終電だからひとっこ一人いないと思ってたんだけど。
いや、実際俺のいる車両には人はいなかったんだけどさ。
隣の車両を見るとぎちぎちに人が乗ってるのよ。
おかしいでしょ?終電の電車だぜ?しかも仮に満員電車だったとしても
空いてる車両にうつればいいじゃん。
俺なんか凄い不安になっちゃってさ。次の駅で降りて歩いて会社まで
戻ろう、ってそう思ったんだよね。

「こうもん、こうもん~」

で、そのこうもん駅とやらについたんで、降りようと思ったんだ。
でも左右どちらのドアも開かないんだよ。
俺わけわかんなくなって。
で、さっきのアナウンス思い出してさ。
お出口は下側です、とかいってたよなって。
それでつい目線を下にやったんだよ。
やめとけばよかったのに。
俺の足元の真下、もともと穴があったみたいにぱっくり開いてて。
そこに大量の穴があったんだ。
ひくひくひくついてる大量の穴が。


「おぇっ!!」

って感じで俺、めっちゃ吐きそうになってw
見た目が気持ち悪かったのもそうなんだけど、
その穴からなんかガスみたいなのが噴出してるんだよ。
硫黄みたいな匂いの、明らかに吸い込んだらヤバそうなガス。
焦ってすぐその場から離れて、座席の上に避難してさ。
そしたらその穴が閉まって、また電車が動き出して。
またアナウンスが流れたんだよね。

「次は、こうもん、こうもん」

また同じ駅の名前?って思ったんだけどさっきとちょっと違うところが
あってさ。文章だとわかんないけど、
声のトーンが気持ち低くなってたんだよね。
ともかく下側に落ちたり、匂いを吸ったらまずいと思って
停車するたびに穴から離れてさ。
でもどんだけ進んでも次の駅はこうもん駅なんだよ。
ただ、それと同時に声のトーンもどんどん下がっていって。
段々何か違和感がでてきたんだ。

「次は、…うもん、…うもん」

もう悪い夢でも見てるんじゃないかって、震えながらさ。
でも恐怖で感覚が鋭くなってるのか、
はっきり聞き取れちゃったんだよね。
まるで誰かを恨んでるみたいな、重くて低い声で、
アナウンスは確かにこういってたんだ。

「次は、ごうもん駅。終点です」


もう俺パニくっちゃって。
なんかそういう時って走馬灯に近いカンジ?なのか、
あ~あの作業の納期もうちょい引き伸ばせたかな、とか
そういや冷蔵庫の納豆、賞味期限ヤバかったな~みたいな、
ワケわかんない考えで頭ん中いっぱいになっちゃってw
体は必死で安全な場所を求めてんだけど、
もうなんか頭がどうにかなっちゃってたのよ。
で、パニックになってる時ほど時間ってあっという間にきちゃってさ。
とうとうそのごうもん駅についちゃったんだよ。
そしたら隣の車両(みちみちに人がつまってたとこ)から
すっげえ沢山の人の声が聞こえてきてさ。

「ありがとうございます」
「ありがとうございます」

って。なんだかわかんないけどめちゃくちゃに感謝してるんだよ。
中には泣きながら笑ってるやつとかいてさ。
そしたらさ、その車両の中から一人笑い泣きしてるやつがこっちに
走ってくるんだよ。
やばいやばいやばい!!
なんかわからないけど絶対やばい!!って感じて、俺そいつから
必死に逃げようとしたんだ。でも、気づいたら俺の足に
枷みたいなのがついてて。
あ~だめだ、終わった。彼女と喧嘩中だけどちゃんと謝っときゃよかった。
そんなこと考えて、それが最後になるんだな~って思った。
そしたら、その笑い泣きしてる男がいきなり俺の足かせに
噛みついて、叫びだしたんだ。

「破邪ーーーーーッ!!!!!!!!」


男が叫びながら足枷を噛み砕いてさ。急に俺、自由になって。

「これがホントのガリガリくん!!!!!!!!!!!!!!」

もう訳わかんなくて、きょとんとしちゃってさ。
そしたら男が俺のこといきなり担ぎあげて。
もう意味不明。ただなんか助けようとしてくれてるのだけは
雰囲気でなんとなくわかった。
凄い勢いで俺を担ぎ上げたまま電車のドアにキックかまして

「破邪邪ーーーーーッ!!!!!!!」


って叫んでるの。そしたら、凄い勢いでドアに電流みたいなのが走って、
ドアが吹っ飛んでいってさ。
思いっきり勢いをつけながら、男が俺のことドアの外に放り投げてさ。
何!?何!?って思ってたら男がにっこり笑顔で。
その時はじめて気づいたんだけど、その男、すげえ美少年で。
例えるなら氷属性っぽいクールな感じ?
現実にこんなイケメンいるんだ、ってさっきまで
命の危機だったのにのんきに思っちゃったw
俺を放り投げたあと、男が一瞬、なんかいってたんだけどさ。

「チャンネル登録、高評価…」

みたいな、感じのことを確か言ってたと思う。
今となっては何なのかわかんないんだけど。
不思議なことに外に放り投げられた俺は元いた駅のホームに
着地してた。駅員さんが近寄ってきて

「大丈夫ですか?お酒飲んでますか?
 もう駅閉めるんで、ごめんなさいね」

っていって締め出されてさ。
もうあっけにとられちゃって。ただ、
ともかくあの美少年のおかげで助かったんだって。
それだけははっきりわかってたんだよね。
そのあとはくたくたになりながら会社に戻って
寝た。シャワーも浴びれなかったから汗まみれで
寝心地最悪だったけどw
あの美少年は何だったんだろう。
今もどこかで俺みたいな人を助けてるのかな。
また会えたらお礼が言いたいな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?