ウィル・スミスのビンタ事件で思い出した「東京で封印される関西人のイジり愛」
2022年アカデミー賞授賞式にて、ウィル・スミスがプレゼンターのクリス・ロックをビンタした事件、この1週間ずっと話題になってましたな。
多くの日本人と同じく、
わたしも最初は「妻が侮辱されたら夫は抗議しにいくべきよな。
まあ暴力を奮うのはやりすぎだから、
冷静に言葉でやり返すのがよかったんじゃない?」
なんて思っていました。
…が、多くの米国人が
「あれくらいのジョーク、笑って流さなくちゃ(特にセレブは)」
とコメントしているのを見て、
「あれれ、この感じ、なんか知っているぞ」と引っかかりを感じ、
なんだっけ?なんだっけ?と遠い記憶をたどると…
思い出しました!「ピンクシャツ事件」を!
「事件」とか書いたけど、ごくごく個人的な話です。
わたしが就職し上京したばかりのとき。
仲の良い同期の男の子(九州出身)が、淡いピンクのボタンダウンシャツを着てきていたのですね。
私は、朝の挨拶もそこそこに、笑いながら
「なんなんピンクとか着て~かわいいと思っとるん!?」
と声をかけたわけです。
そのときの彼のびっくりした顔!
瞬時に、やばい、ここはアウェイだ、と気付いたが後のまつり。
返されたのは「ヒドイ!」の一言で、
「氷河キコは真正面からキツイこと言う嫌なヤツだ」というイメージが
一瞬にして出来上がってしまったのでありました。
この事件があってから、
私は東京での“イジり愛コミュニケーション”を封印し、
ニコニコ笑顔で「それすっごいかわいいね~似合ってる!」
なんて言っちゃう気持ちワリイ人間に成り下がったのでありますですハイ。
…さて、先の私の発言は、関西人がよくやる“イジり”というやつで、
相手のちょっとした特徴や変化を笑いに昇華し、
相手との距離を縮めるコミュニケーション手段。
通常、イジられた相手は
「そやねん、俺かわいいから~」と乗ってさらにつっこまれたり、
「そうそう、オレ、林家ペーみたいやろ…ってなんでやねん!」と自らノリツッコミを繰り出したりするわけです。
ここでさらなる笑いに発展させられるかどうかが腕の見せどころであるわけです。
思うに、笑いのセンスや技術以上に、
「笑われる自分をさらに笑う」ことで、自分を客観視できる視座の広さや、嘲笑を受け入れる懐の深さを示しているのではないかと。
「みんなワシを笑ったってくれ」と赤裸々に表明することが、
まわりまわって「真にかっこいい」と評される、みたいな?
ノーガード戦法で打たれまくっても堂々と戦う姿のかっこよさ、みたいな?(ちがうか)
そんな“イジり愛コミュニケーション”を日々繰り広げている関西人にとっては、ちょっとしたイジりで「ヒドイ!嫌い!」なんて言われてしまうのは、
「えー!そんなことで怒っちゃうの?」だし、
「笑って流してよ~」だし、
もっと言えば「もっとおもしろく返してよよよよ~!」なのであります。
他エリアの人々にとってはこの上なくウザい考えだというのは百も承知なので、表立っては言わんけど。
まあこの事件がウィル・スミスビンタ事件に類似してるかどうかはさておき(絶対してない)、
もしかしたら、同じ黒人でもウィル・スミスは東京っぽい/クリス・ロックは関西っぽい土地でそれぞれ生まれ育ったのかもしれない。
そんで、クリス・ロックはあの後「もっとおもしろく返してよよよよ~!」と涙したかもしれないね~~~
と、勝手な関西おばちゃんは思ったわけでした。しらんけど!