童話:青いお化けと青い海、ハロウィンノベルパーティー2024
お題 青いお化け
むかしむかし、海の水は、今とは 違って 透明でした。どこまでも透き通るようなガラスのような水で、魚たちも 岩の影も、海の底の すみずみまで すべてが 見えるほどでした。
そんな海の一番深いところに、ひとりのお化けが住んでいました。そのお化けは、「青いお化け」と呼ばれていて、体全体がぼんやりとした青い光を放っていました。お化けは青いものが大好きで、海底から漂い上がってくる「青い光のかけら」を見つけては、うれしそうにひと口、またひと口と食べていたのです。
「青い光って、なんてきれいなんだろう。もっと、もっと食べたいな!」
青いお化けは、深海の暗闇の中で毎日せっせと光のかけらを集めて食べました。青いお化けは、いつのまにか、大きなクジラのように巨大になってしまいました。
「どうしよう、ぼく、こんなに大きくなっちゃった。これじゃ、浮き上がることもできないよ」
青いお化けは深い海の底にぺったりと張りついたまま、上に登ることもできず、すっかり、おちこんでしまいました。
体が重くなりすぎて、どんなに泳ごうとしても、ほんの少ししか動けないのです。おまけに、他の魚たちや生き物たちからもからかわれてしまいました。
「おやおや、青いお化けさん、また大きくなったね! もう浮き上がれないんじゃないかい?」
「うるさいな! ぼくだって、もとにもどりたいのに」
青いお化けは ますます おちこみ、海の底でひっそりと すごすだけになりました。
そんなある日、遠くの海から泳いできたマグロは、青い光に包まれたお化けの姿を見てびっくり。
「うわっ! こんなところに、大きなお化けが!」
青いお化けはマグロをじっと見つめ、悲しそうに話しかけました。
「ねえ、マグロさん。こんなに体が大きくなっちゃった。どうしたら、もとにもどるかな?」
マグロは、最初はびっくりしていましたが、青いお化けが本当に困っているのを見て、かんがえました。
「もしかして、食べすぎなんじゃないの?」
「食べすぎ? 僕はただ、青い光を食べてるだけだよ」
青いお化けは、うれしそうに小さな青い光のかけらを口に入れて見せました。そのとき、お化けの体が少しだけ輝きました。
「でも、その光、もしかして体の中にたまりすぎてるんじゃない? ちょっと光を、はきだしてみたらどうだい?」
「やってみるよ。せーの」
すると、お化けの体のあちこちから、青い光がふわっと浮かび上がり、風船の空気を抜くように、青い光は外へと流れ出していきました。
するとどうでしょう! 青いお化けの体はみるみるうちに小さくなっていったのです。
「あれ? 体が軽くなっていくよ!」
青いお化けは、おおよろこびで、体をふわふわと浮かばせながら、元気に泳ぎ回りました。すると、お化けが出した青い光は、まるで水の中にインクを垂らしたように広がり、広い海の水をどこまでも染めていきました。そして、ついには海全体が透き通るような美しい青に染まったのです。
「すごい! 海が青くなった!」
マグロは、おどろきました。青いお化けが、今まで透明だった海を、美しい青色に変えたのです。
「やった! 僕はもとにもどったし、海はこんなに青くなった! 青いってやっぱり素敵だね! ぼくが青をひとりじめにしたのが、いけなかったんだね」
こうして、今でも海が青く輝いているのは、「光を食べすぎた青いお化け」が、ひとりじめしていた青い光を海にもどしたからだと、海の生き物たちは語り継いでいます。
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