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童話:青いお化けと青い海、ハロウィンノベルパーティー2024


お題  青いお化け

10月の各番号の日付に、そのお題の小説を公開するノルマ




むかしむかし、海の水は、今とは ちがって 透明とうめいでした。どこまでも透き通るすきとおるようなガラスのような水で、さかなたちも 岩の影いわのかげも、うみそこの すみずみまで すべてが 見えるほどでした。

そんな海の一番深いちばんふかいところに、ひとりのおけがんでいました。そのお化けは、「青いお化け」と呼ばれていて、体全体がぼんやりとした青い光を放っていました。お化けは青いものが大好きで、海底かいていからただよがってくる「青い光のかけら」を見つけては、うれしそうにひと口、またひと口と食べていたのです。

「青い光って、なんてきれいなんだろう。もっと、もっと食べたいな!」

青いお化けは、深海しんかい暗闇くらやみの中で毎日まいにちせっせと光のかけらをあつめて食べました。青いお化けは、いつのまにか、大きなクジラのように巨大きょだいになってしまいました。

「どうしよう、ぼく、こんなに大きくなっちゃった。これじゃ、き上がることもできないよ」

青いお化けはふかうみそこにぺったりとりついたまま、上にのぼることもできず、すっかり、おちこんでしまいました。

体が重くなりすぎて、どんなにおよごうとしても、ほんの少ししかうごけないのです。おまけに、ほかの魚たちや生き物たちからもからかわれてしまいました。

「おやおや、青いお化けさん、また大きくなったね! もう浮き上がれないんじゃないかい?」

「うるさいな! ぼくだって、もとにもどりたいのに」

青いお化けは ますます おちこみ、海の底でひっそりと すごすだけになりました。

そんなある日、遠くの海から泳いできたマグロは、青い光につつまれたお化けの姿すがたを見てびっくり。

「うわっ! こんなところに、大きなお化けが!」

青いお化けはマグロをじっと見つめ、悲しそうに話しかけました。

「ねえ、マグロさん。こんなに体が大きくなっちゃった。どうしたら、もとにもどるかな?」

マグロは、最初さいしょはびっくりしていましたが、青いお化けが本当にこまっているのを見て、かんがえました。

「もしかして、食べすぎなんじゃないの?」

「食べすぎ? 僕はただ、青い光を食べてるだけだよ」

青いお化けは、うれしそうに小さな青い光のかけらを口に入れて見せました。そのとき、お化けの体が少しだけ輝きました。

「でも、その光、もしかして体の中にたまりすぎてるんじゃない? ちょっと光を、はきだしてみたらどうだい?」

「やってみるよ。せーの」

すると、お化けの体のあちこちから、青い光がふわっとかび上がり、風船ふうせん空気くうきくように、青い光は外へとながれ出していきました。

するとどうでしょう! 青いお化けの体はみるみるうちに小さくなっていったのです。

「あれ? 体がかるくなっていくよ!」

青いお化けは、おおよろこびで、体をふわふわと浮かばせながら、元気に泳ぎ回りました。すると、お化けが出した青い光は、まるで水の中にインクをらしたように広がり、広い海の水をどこまでもめていきました。そして、ついには海全体が透き通るすきとおるような美しい青に染まったのです。

「すごい! 海が青くなった!」

マグロは、おどろきました。青いお化けが、今まで透明とうめいだった海を、美しい青色に変えたのです。

「やった! 僕はもとにもどったし、海はこんなに青くなった! 青いってやっぱり素敵だね! ぼくが青をひとりじめにしたのが、いけなかったんだね」

こうして、今でも海が青くかがやいているのは、「光を食べすぎた青いお化け」が、ひとりじめしていた青い光を海にもどしたからだと、海の生き物たちは語り継かたりついでいます。

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