だいたいニャー、毎週ショートショートnote裏お題、410字
だいたいニャーという猫の鳴き声を翻訳するアプリが世に出た。キャッチコピーは、だいたいの気持ちがわかるーーだった。
春野陽介は、黒猫のクロと暮らしていた。
「よし、これでクロの本音が聞けるぞ」
クロが窓辺でくつろぎながら、ニャーと鳴くと、
すぐ、画面に翻訳結果が表示された。
「もう少し暖かい場所ないかな?」
急いで窓を閉め、暖房を少し強めた。クロは陽介を見たあと、満足げに目を細めて丸くなった。
次の日、クロが朝ごはんを食べたあと、ニャーと一声鳴いた。
「前の缶詰のほうが好きかも」
それからというもの、陽介は何かにつけてアプリを使った。
アプリに表示される、クロの希望や指示を忠実に守ろうと、陽介は頑張って行動した。
数日後、クロは静かに「にゃあ」と鳴いた。アプリの画面には、こう表示されていた。
「これまで、お前の鈍さには呆れていたが、ようやく少しは物事を理解するようになったようだな。いいだろう、この調子で私の期待を裏切らぬよう励むのだ」
(410字)
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よくある、猫と下僕の関係を表現しました。下僕の返事は、「かしこまりました」ではなく、「はいはい」とあしらう感じです。