見出し画像

書庫冷凍、毎週ショートショートnote、410字


探索のため訪れた星で、地球からやってきた男は、凍りついた巨大な図書館を発見した。

凍った本に指を触れると本は解凍されるだけでなく、パラン星という未知の星の言葉や文化、知識が頭の中に流れ込んできた。

書庫の中央に人工冬眠装置と思われるカプセルがひとつあった。

男は、管理者である司書まで冬眠させているのかと驚いた。ここはただの図書館ではない、何かもっと根本的な目的を持つ施設なのかもしれない。男が慎重に歩み寄ると、ゆっくりとカプセルが開いた。

司書のまぶたが、ゆっくりと開く。氷の眠りから覚めたばかりの、鈍い光を宿した瞳が男を見つめていた。

司書がゆっくりと動いた。握られた銀色の銃口が、静かに男を捉える。

男が反応するよりも早く、銃声が空間を裂いた。

その瞬間、男は一冊の本に変わった。

司書はそれを手に取り、書架の奥へと歩いていく。その一角に、新しい本が静かに収められた。

司書がカプセルに入ると静寂が戻る。

図書館は再び、眠りについた。
(410字)

ーーーー
本が凍っているように見えたのは、劣化から本を保護するプロテクトシールドだったんでしょうね。

あるいは、男が生きたまま本になっていると考えると、それは、プロテクトシールドではなく、人工冬眠装置のようなものかもしれませんね。

そこまで妄想を広げると、この文章は、単なる序章で、これから壮大な物語が始まる予感がします。

いいなと思ったら応援しよう!