見出し画像

短いお化け、ハロウィンノベルパーティー2024

お題 短いお化け

10月の各番号の日付に、そのお題の小説を公開するノルマ

ーーーー

 短いお化けと呼ばれるお化けがいた。

 名前は「ミジカ」。彼は他のお化けたちと外見は何も変わらないように見えた。背が低いわけでもなければ、手が短いわけでもない。

 しかし、彼には一つ大きな欠点があった。それは、夜にたった「三分間」しか存在できないことだった。そして三分が経つと、彼は必ず「一分間だけ姿を消す」インターバルが入ってしまい、その後また三分間だけ現れる。それが一晩に四セット。それだけしか出現できない。

 そう。出現する時間が短いお化けだった。

 このため、姿を見せた場所に誰も人間がいなくて、誰も怖がらせることができない日が多々あった。

「こんなじゃ、僕はお化け失格だ」
 ミジカは仲間たちに冷やかされ、悔し涙を流す日々が続いた。

 そんなとき、お化けの仲間の一人がからかうように提案した。
「だったら、お前、自分の出現時間と場所を予告してみたらどうだ? そしたら、お化けを見たい奴が集まるぜ」

「時間と場所を予告?」
 ミジカはその言葉を聞いて、飛び上がった。
「そうだ! 僕がいつどこに出るか、ちゃんと人間たちに教えてあげたら、わざわざ見に来てくれるかも!」

 その晩から、自分の「出現予告」を他のお化けに頼んで、町中のあちこちに貼ってもらった。
 コンサートの告知ポスターのように派手で目を引き、人々の目に留まるよう工夫を凝らしていた。

 最初は、観客は少人数だった。ミジカが姿を現し、「ばあっ!」と飛び出すと、男性たちは驚きと興奮で声を上げ、「本当に出た! すごい、本物だ!」と騒ぎ立てた。それから、だんだん多くの人が指定する場所に集まるようになった。

 ある晩、ミジカが駅前に現れると、すでに大勢の観衆が待ち構えていた。ざっと見たところ、数百人もの人々が広場を埋め尽くし、カメラやスマホを片手に構えていた。

「うわあ、こんなにたくさんの人が僕を見に来てくれるなんて!」
 ミジカはその光景に感激した。
 彼はその夜、最高の「三分間パフォーマンス」を披露した……つもりだった。

 そして三分が経ち、姿を消すインターバルに入ると、ミジカはふっとその場から一分間消えた。

 そして、次の三分のパフォーマンスのために出てくると、観客は興奮冷めやらぬ熱気に包まれていた。三分のパフォーマンスを終えて、また、インターバル。続いて、また、パフォーマンス。

 その時、ミジカは、観客の様子がおかしいことに気づいた。みんな熱狂的なのだが、帰れとか、引っ込めとか言っている。
 そしてすべてのパフォーマンスを終えてこの世から去った後、反省するのだった。

 みんな、僕を置いて帰ったわけではない。
 つまり、みんな僕のファンなんだ。でも、パフォーマンスが期待したほどじゃなかったから、激励してくれているんだ、そう考えていた。

 しかし、ミジカはインターバルでの出来事を知らなかった。

 ミジカが消えると、観衆の前に現れたのは、夜の闇に映える絶世の美女。きらきらとした瞳に豊かな黒髪、そして際立つプロポーション。彼女はどこからともなく現れると、颯爽とビキニ姿を披露し、両手に持ったボードを高々と掲げながら広場を優雅に歩き回っていた。

 そう、ラウンドガールお化けが、ミジカの告知を見て便乗していたのだ。

 彼女は「3分出現し、1分休憩」というミジカのタイムスケジュールを知り、その規則正しさがボクシングのラウンド制と同じであることに気づいたのだ。

「これはまさに私の出番じゃない!」と、彼女はその晩から、ミジカが消えるたびに「ラウンドガール」として姿を現し、カウントボードを掲げて観衆を盛り上げるようになっていた。

 ミジカが告知を出すたびに、彼女も密かに自分のスケジュールを組み、ちょうどミジカの消える1分間に登場しては、次の「ラウンド開始」を優雅に告げていたのだ。

 彼女の計算された登場と華やかなパフォーマンスは、ミジカが消えている間の1分を「待ち遠しい時間」ではなく、「特別なショータイム」へと変えていた。

 結果として、観衆はいつの間にかミジカよりも彼女の登場に熱い視線を送っていたのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?