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哀しむお化け、ハロウィンノベルパーティー2024

10月の番号の日付に該当のお題の作品を投入します。

#哀しむお化け
 もはや、主催者すらもやる気をなくして投げ出したと思われる企画をひとり、遂行している。
#ハロウィンノベルパーティー2024

毎晩、古い館から聞こえるお化けのすすり泣き。人々はその哀しげな声を聞き、街の皆は、きっと過去に大きな悲劇があったのだろうと噂していた。住民たちは、彼女の哀しみを恐れ、その理由を深く知ろうとはしなかった。しかし、ある夜、若い女性が偶然その声を耳にし、あまりに気になって軽い気持ちでお化けに話しかけた。

「どうしてそんなに泣いてるの?」
彼女は特に恐れも抱かずに聞いた。

すると、意外な返事が返ってきた。
「だって、私、鏡に映らないのよ」
お化けはしょんぼりと呟いた。

女性は目を丸くして驚きながらも、笑いを堪えきれず、思わず声をあげた。
「それって、お化けあるあるじゃん!」
お化けは一瞬呆然としたが、次第に自分でもその状況が滑稽に思えてきたらしく、ふっと笑みを浮かべた。
「そうよね、そんなに大した不幸じゃないわよね。みんな鏡に映らないんだし」

自分の哀しみが大げさだったことに気づき、お化けは少しだけ心が軽くなった。姿も徐々に薄れていった。

その姿を見てお化けはささやいた。
「もしかして、このまま成仏できるんじゃない?」

しかし、次の瞬間、女性が急にバッグから小さなチェキカメラを取り出して笑顔で言った。
「じゃあ、これで撮ってあげる!」

「本当に撮れるの?」
シャッターを押すと、写真がすぐに出てきた。
「はい、これがあなたの姿だよ」
 女性がその写真を見せた瞬間、お化けの顔は一変した。

「ええっ!こんなに怖い顔になってるなんて!これじゃあ死んでも死にきれないわ!」
お化けは、そう叫んだ。写真の自分は不気味で、髪は乱れ、目は虚ろ。その姿は、生前の面影とはまったく違っていたのだろう。お化けは、自分の恐ろしい姿を目の当たりにしてショックを受けたようだった。
「これじゃ成仏なんてできない!」

そして不思議なことに、お化けの姿は写真を見た途端、再びくっきりと現れた。彼女の存在感がますます強まった。知らぬが仏とはこのことだった。

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