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チョコニート、毎週ショートショートnote(裏お題)、410字


警戒が足りなかった。
俺は、人間狩りのAIに撃たれた。チョコニート銃だ。

弾が皮膚に当たった瞬間、甘い香りが立ちのぼった。細胞や血管が溶け、筋繊維がカカオの粒子に置き換わる。肌はほんのり茶色くなり、やがて深いチョコレートの色へと染まっていく。

もう外には出られない。
チョコレートだから日光に触れれば崩れ落ちる。体は完全な引きこもり仕様へと変わった。闇の中でしか生きられない。しかし、俺が身を潜める理由はそれだけではない。

飢えた人間たちが、俺の匂いを嗅ぎつける。

AIが仕事を奪い、人間は働かなくなった。働かない者には収入がない。食べ物にも困っている。

AIは、人間のことが邪魔だった。でも、街でバタバタ死なれては処理に困るのだ。

人間は、皆、ニートになった。チョコニート銃――人間をチョコレートに変質させる。

俺は暗闇に身を潜める。溶けるのが怖いわけじゃない。

食われるのが怖いのだ。

飢えた人々は、食糧として我々チョコニートを狩るのだ。
(410字)

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