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一方通行風呂、毎週ショートショートnote、410字
気がつくと花畑にいた。
そうだ。俺はトラックに轢かれて死んだんだ。
「こちらですよ」
女性に手を引かれて建物の中に入った。
長い廊下を歩き、女性は引き戸を開けた。
「このお風呂で現世の汚れを落とします」
そこは大浴場だった。一人に一人の女性がつき、体を洗ってもらっている。体を洗う女性たちは皆、服を着たままなのに濡れていない。
体を洗われているのは男性ばかりで、ここが男湯だとわかる。赤ん坊からお爺さんまで、年齢は様々だ。
「ここに座ってください。お背中流しますね」
言われるまま座ると、女性は俺の体をタオルで擦り出した。
湯船の方で、ジャボンと音がした。
また、ジャボンと音がした。
音の方を向くと、体を洗い終わった赤ん坊を女性が湯の中に投げ込んでいた。
立ちあがろうとしても、力が入らない。
自分の体を見ると擦られるたびに、手足も体も細く短くなっている。
あれ、俺は誰だ?ここはどこだ?
「生まれ変わりの準備ができましたよ」
俺も湯船に放り込まれた。