
夜からの手紙、毎週ショートショートnote、410字ちょうど
夜からの手紙、35文字以内のメッセージが、毎晩机の上に出現する。
傘を持って行けと書かれた次の日の帰宅時には雨が降り、プレゼン資料二十ページ目に小さな誤りがあるからそれを修正せよと書かれた次の日、上司から称賛された。
「彼女を引き留めろ。必ず一緒に夕食を食べるように誘い出せ。何があっても」
その夜のメッセージだった。
きっと、隣のオフィスで働くメアリーのことだ。
私は迷ったが、電話をかけた。
「一緒に夕食でもどうかな?」
断る彼女をしつこく誘った。
「どうしてそんなに必死なの?」
彼女は少し戸惑いながら、そう言って電話を切った。
その晩の手紙はこうだった。
「彼女は事故に遭った。どうして止めなかった?」
私は血の気が引いた。彼女に電話をかけようとしたが、繋がらなかった。翌日、彼女の乗った車が交通事故に巻き込まれ、命を落としたと知らされた。
その晩の手紙には……、
「君は運命を避けられなかった。これから君も同じ手紙を過去の自分に送るんだ」
(410字)