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毎週ショートショートnote「チャリンチャリン太郎」410字
昔々、昭和の初めに自転車が捨てられていました。
お爺さんは、その自転車を拾って帰りました。
その夜、自転車を磨いているとサドルが開いて中から赤ん坊が出てきました。
お爺さんとお婆さんは、この子がどんなファンタジーな出来事を起こすのかと楽しみにチャリンチャリン太郎と名づけて育てました。
ある日、太郎が川に行くと、声が聞こえます。
「おい、自転車のやつ!」
「あなたは誰?」
「俺は河童だ。お前は新種の妖怪だからまだ、名前がない。だから、自転車のやつって呼んだんだ」
「え、僕、妖怪なの?何をする妖怪なの?」
「曲がり角で自転車も来てないのにチャリンチャリンと音を鳴らして人間を脅かすんだろ。何で本人が知らないんだ」
「僕、人間に育てられたから」
「何やってんだよ、妖怪のくせに」
太郎は家に帰り、そのことを話しました。
「これからは玄関に隠れて、お客さんが来たらチャリンチャリンと音を出して知らせるよ」
お爺さんとお婆さんは便利に暮らしましたとさ。
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』