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宇宙のお化け、ハロウィンノベルパーティー2024

 お題 宇宙のお化け

10月のこの番号の日にちに該当の話をアップします。

 銀河系の果て、宇宙船の墓場と呼ばれるエリアには、無数の宇宙船が次々と姿を消していた。不気味な噂が広がり、付近を航行する船はなぜか吸い寄せられ、動けなくなり、その乗組員たちは死後「宇宙お化け」と化すというのが定説だった。実際、そこには様々な異星人の霊魂が集まり、定期的に「宇宙お化けパーティー」が開催されていた。

 今夜も、幽霊船を会場に、宇宙人たちのゴーストが集まっていた。身長数メートルもあるゴリラ型の惑星ベクター7のゴースト、無数の触手を持つゼブラ星系の幽霊、液体のような身体を持つウィロス星の元研究者など、異形の姿が浮遊しながら、それぞれ生前の武勇伝や恐怖話を競い合っていた。

「俺は生前、あのM78星雲のブラックホールから船を抜け出したんだぜ!」
「いやいや、俺なんか、死ぬ間際に惑星を爆破したぞ!」
 誰もが自慢話を披露する中、パーティー会場に現れたのは、どこか地味な風貌の地球人ゴースト、名をジム・ブラウンという男だった。

 宇宙人たちは笑顔で迎えた。
「おい、新顔だ!地球人の幽霊なんて珍しいぞ!」
 ジムは少し緊張しながら、彼らの輪に加わったが、宇宙人たちの話のスケールの大きさに圧倒されるばかりだった。

「で、地球人って寿命どれくらいなんだ?」
 ベクター7のゴリラ型ゴーストがジムに尋ねた。

 ジムは少し戸惑いながら答えた。
「だいたい、百歳くらいかな」

 するとウィロス星のゴーストが笑った。
「俺たちは5000歳くらいだぜ」

 他の宇宙ゴーストたちも口々に笑い出した。
「百歳!?それじゃ何もできないだろ!」
「短すぎだぞ!ペット並じゃないか」

 ジムは困惑して、自虐的に返した。
「いや、あんたたちがすごすぎるんだよ!」
 場はまるで漫才のような和やかさに包まれ、宇宙人たちは「地球人って変わってる」と感心し、ジムも次第にその奇妙な集団に溶け込んでいった。

 パーティが佳境に入った頃、ジムはふと告白を始めた。彼は実は、宇宙船の墓場に吸い込まれる現象を解き明かすためにわざと死んだ「潜入研究者」だったのだ。死後、幽霊としてその謎を調査していたジムは、これまでに消えた船が墓場に引き寄せられる原因が、この幽霊たちの集うパーティーそのものだと気づいていた。

「実はこのパーティが原因なんだ!」とジムは叫んだ。「この集団意識が、近くの船を無意識に引き寄せてるんだよ!」

 ゴーストたちは驚愕して反論するが、ジムは調査結果を次々と提示し、彼らに説明した。やがて、幽霊たちもその事実を受け入れ、困惑した。
「つまり、俺たちのパーティーが宇宙船の墓場を作っていたってことか……」
「このまま続けてもいいのか?」

 そして、沈黙が訪れた。
 
 その沈黙を破るように、ベクター7のゴリラ型ゴーストが質問した。
「お前、それがわかったって、そんな研究のために死んで本望なのか?」
 ジムは少し笑いながら答えた。
「実は、研究は言い訳さ。僕はただ、退屈な生前の生活から逃れて、永遠を楽しみたかっただけなんだ」

「おまえが考えた、地球人の短い寿命の克服方法かよ」
 その言葉に他の宇宙ゴーストたちも吹っ切れたように大笑いした。
「なんだ、そういうことか!」
「よし、これからもどんどん新入りが来るぞ!盛り上げていこう!」
 賑やかな雰囲気の中で、宇宙ゴーストたちは納得し、次のパーティの準備を進め始めた。

 こうしてジムは、自分の目的を達成し、永遠に続く奇妙なパーティの一員として、宇宙船の墓場での生活を楽しむことになった。

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