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決闘年越しそば、毎週ショートショートnote、


「おい、年越しそばができたぞ」

そう言いながら、兄貴がカップ麺のそばを二つとコップに入った酒を二つ持ってきた。

都会で働いていた兄貴のところに、大学に受かった俺が転がり込んだのだ。そして、正月に帰省する金がもったいなくて、むしろ、バイトの書き入れ時に帰る選択肢などなかった。

ふと、兄貴の手を見ると何故か片方だけミトンをつけたままだった。

「兄貴、台所で誰かと決闘してきたのか?」
兄貴は意味がわからず、首を傾げている。西洋では、決闘を申し込む時、片方だけ手袋を外して相手に投げるのだという。それを説明すると兄貴が言った。

「じゃあ、よく、道路に落ちている片方だけの軍手は決闘の後なのか?」

「いや、あれは違う。大型トラックの燃料タンクのキャップの上に片方の軍手をつけて漏れないようにしているんだ。それが振動で落ちて、片方だけ残されるんだ」

「嘘だ。どっちが早くそばを食べられるかで決闘だ」

決闘に勝った方が正しいなんて、どこの蛮族だよ。

(410字)

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