バンドを組む残像、毎週ショートショートnote、410字ちょうど
演奏が始まった。
バンドのメンバーは五人。ボーカルを除く四人の身体は、観客には残像にしか見えなかった。
ギターを弾いているかと思えば、その指先は次の瞬間にはベースの弦を弾き、キーボードを叩く指が不意にスティックを握り、ドラムを叩いていた。
すべての楽器を演奏したいという、四人の欲望によるものだった。ギター、ベース、ドラム、キーボードという区別をしたくないと主張し、特定の役割に固定されることを激しく拒否したのだ。
大谷は二刀流だが、俺たちは四刀流だと胸を張った。
曲が終わるたびに、残像は一瞬のうちに消えて、四人の姿が再びそこにあった。
そして、最後の曲が始まった瞬間、四人はまた、残像となった。
しかし、今度は曲が終わっても、四人は現れなかった。代わりに四人が動いていたところに黄色くどろっとしたものが円状に出現した。
ボーカルが言った。
「彼らはもう、ここにはいない。あまりに速く動き回ったので、あいつら、バターになっちゃったんだ」
このお題を見た時、二つのことを思い出しました。
ひとつは、ちびくろさんぼ。
このネタを理解してくれる人が何人いるかな。
元の話は、「ちびくろさんぼ」と言う話。昭和30-40年代にはメジャーな話でした。
4匹の虎が木の周りをぐるぐる回っているうちにドロドロに溶けてしまい、みんなバターになってしまったと言う話です。
そこを通りかかった、さんぼのお父さんのじゃんぼがそのバターを壺に入れて家に持ち帰りました。
お母さんのまんぼは、そのバターを使ってとても美味しいホットケーキをたくさん作ってくれました。
そして、みんなで楽しくホットケーキを食べたという話です。
二つ目は、島根県にある大田市立第三中学校吹奏楽部。
ここは、私が中学生の頃、吹奏楽の有名校でした。しかし、山間部にあるこの学校は、過疎化が進み、部員を確保できなくなりました。
そこで、始めたのが、一つの曲を演奏するために、一人が何個も楽器の掛け持ちをするという方法です。
今回のお話は、それをミックスして作ってみました。