山岳フリマ、毎週ショートショートnote、410字
朝は絶好の登山日和だと思っていたのに、山の中腹に差し掛かったあたりで、不意に視界が霧に包まれた。
休む場所を探していると広場にたどり着いた。そこだけは驚くほど霧がなく晴れ渡っている。テントが並び、人の気配があった。
一番手前のテントの店主が言った。
「ここは山岳にあるフリーマーケット、山岳フリマだよ。このまま進むと危険だ。何か買っていきなさい」
各テントの商品は普通ではなかった。行くべき方向に勝手に歩く靴。道を示すと言われる魔法のコンパス。決して壊れないというテント。その中で目を引いたのは、困った時に帰るべき場所に導いてくれるロープだった。
そのロープを買い、フリーマーケットをあとにした。
少し歩くと、霧で周りが見えずに歩けなくなった。ロープを手に握ると、先端が自然と動き始め、道案内をするように行くべき方向を示した。
そして、着いた所は、さっきの山岳フリマだった。店主が微笑む。
「おかえり。今度はなにを買ってくれるんだい?」