どこかで繋がるかもしれない君へ
大学生〜大学院生の頃は、
SAPIXという進学塾で講師をしていました。
中学受験を控えた子どもたちを相手に
理科を教えていたんです。
クラスは一番下の、
勉強嫌いの子供たち。
その大半は
『親のすすめ』
が理由で通っている子供たち。
自分から勉強したくて来ている子は
皆無でした。
そんなわけだから、
勉強に対するモチベーションがすごく低い。
勉強なんてしたくない。
けれど、通わなくてはいけない。
分かるぞ。
その気持ち。
だって私もそうだったから。
私たち大学生は、
契約社員だったか派遣社員かの契約で
先生をしていました。
初めの数ヶ月は本職の先生の授業に
サポートとしてついて回るのです。
クラスには、寝てしまう子も沢山いました。
その子たちに対して
「やる気がないなら辞めちまえ」
なんて怒鳴る先生が
まだ平気でいる時代だったんです。
私はそれが許せなくて、
反論したことがありました。
だって、先生より他の生徒より
その子の気持ちが痛いほど分かったから。
その子の背景を知ろうとも支えようともせず、
切り捨てる先生の考え方が許せなかった。
自分がクラスを受け持つときは、
絶対にそんなことはしないと、
そのとき自分自身に誓いました。
それから3ヶ月後、
受け持ったのは、Aクラス。
荒れて騒いで立ち上がって、
あるいは寝るかお喋りするか。
ここは動物園か?と思える始末の
一番下のクラス。
少しでもこの子達のためになりたい。
そう思い、
幼いころの記憶を呼び覚まして
自分がどんな気持ちだったか
どんな言葉なら届くか
どんな風にすれば成果を出せるか
精一杯考えました。
そうして考えついた生徒たちへの
プレゼンテーションのタイトルは…
格好良くあるいは可愛くなれる勉強法
それは、
クラスを受け持って第1回目の授業で
こんな説明から始まりました。。
みんな、小学校のクラスで、
トップ3くらいにいる子を想像してほしい。
分かりやすいのは、学年で3本の指に入るくらいモテる異性だ。
スポーツができて
勉強もできて
みんなに慕われる人気者
どれかに該当する人はそこそこいるだろうが、その全てに当てはまるレアな人。
もしかしたら君の好きな子かもしれない。
どうだろう、イメージできただろうか。
そしたら、その子をよーく観察してほしい?
君より騒がしいか?
君より字が汚いか?
君よりだらしない格好か?
いいや、きっと違うだろう。
そして君は思うはずだ。
だってあの子は生まれつきそうなんだもの。
バカを言っちゃあいけない。
君はそんな思い込みを信じて、
残りの人生を生きていくつもりか?
もし変えられるとしたら、
君はいったい、どうしたい?
私が勧めたいのは、こんなことだ。
そんな子になれるなら、なりたくないか?
なれるさ。
それは当たり前と自分では分かってることを、当たり前にやることでなれるんだ。
このクラスにいる周りの子を見てみよう。
いないね、そんな子。
でも、
一番上のクラスには、いるんじゃないか?
そんなふうになりたい?
なるために何をすれば良いかって?
そのためにこの3つを守ってくれ。
・人に迷惑をかけない
・字を綺麗に書く
・基本問題だけ、満点取るつもりで勉強する
なんでこれを守ればいいのかって?
OK、ここから1つずつ説明しよう。
・人に迷惑をかけない
『騒ぐな』と言われても、
君たちはなぜかが分からない。
だから通じないだろう。
これから、『なぜ騒いじゃいけないか』を
理論的に説明しよう。
クラスで馬鹿騒ぎして迷惑かける嫌な奴と、
馬鹿騒ぎは好きだけどやり過ぎない奴、
君はどっちと仲良くなりたい?
歯をろくに磨かす風呂に入らない汗くさい子と
石鹸の匂いや花の匂いがするわけじゃないが、イヤな匂いが一切しない子、
顔も頭も同じレベルならどちらを選ぶ?
答えは分かっているだろう?
すごく静かな奴じゃなくていいし、
すごくイイ匂いのする子じゃなくてもいい。
『嫌じゃない』って0じゃない。
もちろんマイナスでもない。
だから、重ねれば重ねるほどプラスになる。
大人になればなるほど、
それを実感することだろう。
その嫌じゃないって特徴を
シンプルに言い表すなら、
『人に迷惑をかけない』ってことなんだ。
人に迷惑をかけないためには、
考えること、
経験して、日々反省と改善をすること、
そのどれもが必要だ。
それは日常生活にかぎらない。
なるべく失敗しない奴ってのは凄まじい。
合唱コンクールで、
隣の子が音程も歌詞も間違いだらけ
だったらどう思う?
テニスをやってるのに、
相手のサーブがちっとも入らなかったら
君は楽しいか?
勉強だってそうだ。
さて、君は何をすべきだろう。
一番いいのは、
みんなで競ったり教え合ったりして
お互いにレベルアップすることだ。
騒いで授業を止めることじゃない。
周りのレベルを下げるような奴を、
誰が好きになるものか。
かといって、
ガリ勉になれって言ってる訳じゃない。
それじゃ何をすればいい?
それを教えるために、
この後の2つを紹介するんだ。
・字を綺麗に書く
人に見られてるって意識は馬鹿にできない。
自分の悪さと向き合えない奴。
向き合える奴。
その違いは、意識の持ち方だ。
物事の良し悪しを学ぶことは、
『人に迷惑をかけない』ことに通じる。
何をすれば人はよく思ってくれるか
何をすれば人は嫌がるか
格好つけるんじゃない。
これは似ているようで、まったく違う。
字は、綺麗なほうがいい。
雰囲気が格好良いってのは、感覚だ。
人によって好みがでる。
でも字はどうだろう。
誰がみても、
綺麗な字ってのは綺麗なんだ。
みんなが納得する
『できたほうがいいこと』を当たり前にする
ってことが大事なんだ。
そのために、まず何をすればいい?
勉強の基本はなんだ?
書く、読む、聞く、話す
この4つだ。
書くの基本ってのは、綺麗に書くことだ。
読む、聞く、話す
これらの基本ってなんだと思う?
みんな自分の頭で考えて、
それを実践してみよう。
ここまでの2つを聞いて、
周りの人の目を気にして生きろってことか?
と気になった人はいるだろうか。
周りの人なんて関係ない。
他の人なんて知らないよ。
自分は自分なのだから。
その考えは、甘い。
互いに競い、励まし、支え合う人がいる。
それがどんなに素晴らしいことか。
1人になるな。
いまの君の思想を貫いた先の結論はこうだ。
1人でも
大抵のことは成し遂げることはできる。
ただし苦痛がつきまとう。
いいかい?
たいていの幸せは、
周りの人と仲の良い関係がある先にあるもの
なんだ。
その幸せは、君の苦痛を和らげてくれる。
君自身も、誰かの幸せの助けになれる。
人に悪く思われないことってのは、
そのために必要なんだ。
生き物というのは、
互いを刺激し合うことで進化してきた。
人に限らず、これは不変の事実だ。
仲間は必要だ。
そのために、
周りの人を大切にしろってことだ。
・基本問題だけ、満点取るつもりで勉強する
どんなスポーツでもいい、
イメージしてみよう。
バットやラケットを持って素振り、
パワーを上げるための筋力トレーニング、
スタミナをつけるためのランニング。。。
何もしないでいきなり本番を繰り返すプロを
君は見たことがあるだろうか。
ない。
それだけでは
壁を越えることができないからだ。
君はゲームをやるとき、
レベル上げしないままボスに挑むつもりか?
好きなスポーツ選手に誰がいる?
イチローでも中村俊輔でもいい。
イチローがどれだけバットを振ったか。
中村俊輔がどれだけフリーキックをしたか。
筋トレにたくさんの時間を費やして、
まいにち適切な食事を摂って、
そしてスポーツに必要なトレーニングを
繰り返して、
そしてはじめて、いい活躍ができるんだ。
勉強にとっての基礎とは何だった?
書くこと、読むこと、聞くこと、話すこと
これらはスポーツでいう、
準備運動と筋トレ、
チームメイトとのコミュニケーション
に該当するんだ。
しなやかで逞しい身体、
頼もしい仲間を手に入れた次にすることは?
そう、そのスポーツに必要なトレーニングだ。
さぁ、サッカーなら何をする?
ドリブル、パス、シュートだろう。
勉強にとってのドリブル、パス、シュートは、
基本問題だ。
問題用紙の1️⃣と2️⃣。
これが完璧にできると、
残りの問題は○を取れなくても△が取れる。
一番難しい4️⃣ばかり頑張って勉強する行為は、
普通のシュートがろくに入らないのに、
オーバーヘッドシュートを練習するようなもの
なんだ。
先月あったテストの採点用紙がここにある。
点数の割り振りを見てみよう。
1️⃣と2️⃣が満点だと、
100点満点中50点が取れる。
3️⃣の⑴、4️⃣の⑴が取れたら何点になる?
70点だ。
残りの問題で△が取れたら、
80点以上が取れる。
テストの全体平均点は何点だった?
60点だ。
君は平均より10点から20点も多く取れる。
国語、算数、理科、社会
4科目の合計で40点から80点も、
みんなに差をつけることができる。
ちなみに、このクラスの平均点は35点だった。
1️⃣と2️⃣が完璧にできたら、
あとは寝ててもクラスのトップだったんだ。
成績がいい奴のカラクリが分かったかな?
さぁ、君はどうする?
基礎を極めるってことが、
どれだけ凄いことか。
周りの大人に聞いてみてもらいたい。
そして、基礎を極めることの効果は、
いい点を取れるってだけじゃない。
最も凄い効果とは、
いいかい、最も凄い効果とは、
できるって経験を得られることだ。
基礎問題ができて、
○が沢山つくようになって、
自分に自信を持てることが、
実はすごく大事なんだ。
うれしくなったら、
楽しくなったら、
こっちのものだ。
自転車のペダルをこいだ時、
初めだけ重たいだろう。
物事はなんでも最初がしんどい。
でもスピードがついてくると、
前より軽くなるし、楽しくて仕方がなくなる。
その感覚を手に入れてもらいたいんだ。
これを手にした君は、もう昔の君とは別人だ。
約束する。
間違いなく、君は、輝く。
騙されたと思って、
この3つを、3ヶ月だけ試してほしい。
やり抜いた君たちを、
必ず上のクラスへ連れていく。
あの頃、
Aクラスで講義を聞いてくれていたみんなは
どうしているかとたまに考えます。
中野、吉祥寺、国立、
夏休み冬休みには横浜校にもよく行きました。
教え子全員を数えたら何百人になるだろう。
先輩ぶっていたけれど、
たかだか10歳弱の歳の差だった。
あのころ教えた子供たちは、
もう30歳前後のはず。
これを読んでる人の中に
もしあの時の生徒がいたら、
どんな風に成長したのか、
ぜひ見てみたい。話してみたい。
これを読んでいなくとも、
どこかでその時の誰かと繋がることを
心の奥底から夢見ています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?