『オススメの短編(2)』
母子像 - 筒井康隆
kobochanne
さて、前回に続いて、おれのオススメふたつめは『母子像 - 筒井康隆』です!
母子像 - 筒井康隆
(リンクは同作を収録する『鍵 - 自選短編集 (角川ホラー文庫)』)
古い家に妻と赤ん坊の3人で住んでいる歴史学者の「わたし」は、デパートで見かけた1匹だけ白いサルの玩具を自分の子供に買い与える。ある日、妻子とともにサルの玩具がこつ然と姿を消してしまい、わたしは古い家の中で妻子の痕跡を追いかける。
guchon
でた!これね!おれも候補にあげてました!大傑作!
kobochanne
筒井康隆の短編って他にもメジャーな名作はいっぱいあるけど、今回いろいろ読み直しても『母子像』が好きだったわー。意味はまったく理解できないんだけど、とにかく気になっちゃう短編。
guchon
コボチャンは、はじめてコレを読んだのはいつ頃だったの?
kobochanne
筒井康隆にハマったのは高校の頃だったから、たぶんその頃だったんじゃないかな…。
guchon
おれも同じかんじで高校の頃に図書館で借りた筒井康隆の短編集だったなー。
kobochanne
ぐちょん、図書館の利用率高かったんだなー。全然そんなイメージなかったわー。
guchon
ほぼ帰宅部だったし帰る電車の本数が少ないから、めちゃ図書館いってたよ。
当時これを読んだとき、サルの玩具と母子の様子が不気味すぎてしばらく頭から離れなかった。
kobochanne
サルの玩具を気持ち悪いアイテムとしてあつかうのって『パプリカ』っぽいというか、筒井康隆らしいセンスだよね。
てか、サルの玩具を検索してみたら、マジ気持ち悪いし。ヤダ〜。
guchon
筒井康隆のホラー系の短編、名作が多すぎるけど、描写が一番印象に残るのは断然これよね。
kobochanne
とくにラストで奥の間に母子が座ってる描写がホント怖い。
guchon
その描写、今ちょっと思い出しただけで鳥肌たったし。
kobochanne
あの描写って、ただ「怖い」ってだけじゃなくて「生々しい」とかタイトルどおり「神々しい」とも感じられて、なんだかよくわからない気持ちになるのが、また「怖い」んだよね。
いい意味なのか、わるい意味なのかもよくわからんっていうか。
guchon
めっちゃわかる!上手くあてはまる言葉がないよね。
単純なバッドエンドでもないし。
kobochanne
そうそう!バッドエンドではないけど、絶望感というか虚無感があるんよね…。
こういう気持ちの整理がつかないストーリーって、今になって読むと、なんか不条理を受け入れるだけの心の余白ができるというか、落ち着くかんじもある。
guchon
たしかに年をとって感じ方が変わるのわかるし、『母子像』はたびたび読み返したくなるよね。
てか、この1970年に出たときの装丁、マジかっけぇ!
kobochanne
わはは!荘厳すぎ!かっけー!
guchon
この表紙は納得だわ。
kobochanne
筒井康隆は、それなりに作品数読んだと思うけど、もし自分用に筒井康隆オムニバス作ったら『母子像』は絶対入れるわー。
guchon
間違いないね!とにかく記憶に残る作品だし。
神への長い道 - 小松左京
guchon
続いてのおれのオススメは『神への長い道 - 小松左京』です!
神への長い道 - 小松左京
(リンクは『小松左京短編集 東浩紀セレクション(角川文庫)』)
時は56世紀、世の中に嫌気がさしたので、遠くの星までみんなで行ってみた。
これは大人になってから2012年に出た小松左京セレクションで読みました!
kobochanne
おれも紙の書籍を探したんだけど全然見つからなくて、結局Kindleの東浩紀セレクションで読んだわー。これは大名作でした!マジ、スケールでかすぎた。
guchon
いきなり56世紀だもんね…。56世紀って!
kobochanne
ヤケクソみたいな設定だよね。しかも冥王星からスタートするし。
guchon
そこからまた遠くへいくからなー。ずっと遠くへ行き続ける話よね。
kobochanne
前半の文明の停滞と閉塞感の部分は現代の自分の感覚にもフィットしてたし、その部分があるから遠くに行く話も引き立つよね。
guchon
クールに人類への道標を指し示してる作品なのに、ラストの「しっかりやれ!」で笑っちゃうんだよね。しかも「しっかりやれ!」をやたら強調するし。
kobochanne
わはは!でたー!やっぱりそこだよね!
「しっかりやれ!」の箇所、あまりに好きだったから引用しておきます。
エヴァの体は、つめたく、すべすべして、まだ青い果実のようにかたく、その体をさらにかたくこわばらせていた。──エヴァの体をまさぐりながら、彼は、三、四千年も昔に行った、セックスの、遠い記憶をもまさぐっていた。──自分が、ほとんど、やり方を忘れてしまっているのに、彼はびっくりした。まるではじめての時のように、不細工に愛撫をすすめながら、彼は自分たちの上にひろがる暗黒の宇宙に、ふと眼をやった。
宇宙よ……しっかりやれ!
そんな言葉が、突然胸の底にうかんだ。
guchon
わはは!今読み返したら最後もセックスで終わってるもんね。ほんといい。
kobochanne
全然いい終わり方なんだけどね!
guchon
最高の終わり方だよね。作中で語られる宇宙と神の関係性みたいなのも、マジ説得力あるし。
それでセックスで終わるとか、完全に文句なしだよ。
kobochanne
そうそう、後半〜ラストへのストーリー展開は迫力あるし、「神」を取り扱う作品のなかでベストに挙げたいくらいヤバかった。
主人公や56世紀人が退廃的なメランコリィに浸ってしまうところも全然違和感ないし、そのうえで最後には希望のある終わり方。
guchon
登場人物全員、退廃的になってるけど、最後はなんだかんだで「しっかりやれ!」になるし、やる気が出る短編だよね。
みんなで次の宇宙を想像(創造)できるレベルになるぞ!っていう気概よ!
kobochanne
わはは!そういわれると、かなり体育会系なノリ!
やるぞー!
guchon
やるぞ!やってやるぞ!
kobochanne
しっかりやるぞー!
guchon
わはは!
『神への長い道』は1960年代だし、50年以上前って昔すぎだよね。
そもそも、今回のオススメ作品が全部オールドスクールすぎるし!
kobochanne
しかも、どれもおれらとそう変わらない年齢で書いてるからね。
作者の著述時の年齢(だいたい)
『ワダチ』1974年頃、松本零士36歳頃
『名人伝』1940年代、中島敦32-33歳頃
『母子像』1970年頃、筒井康隆36歳頃
『神への長い道』1960年代、小松左京30歳頃
guchon
本当みんなしっかりやってる。
そして、最近の短編を全然読んでないことにも気づきました。
kobochanne
おれも、最近の作品をひとつは選びたかったんだけど、不勉強でオススメできるような作品、とくに日本人作家は全然知らなくて選べませんでした。
自分のせいなんだけどアンテナが低くなっちゃったんだと思うわー。
guchon
わかるわー、短編はケン・リュウ辺りの海外作家を読んだのが最後かもしれない…。楽しみにしてる小説、もう『三体』だけだし。
kobochanne
わはは!おれも、ケン・リュウとテッド・チャンしか読んでないわー。おれは『三体』も読んでないし。
guchon
完全一緒すぎ!
kobochanne
アンテナは高くもっていたいよね。
オカダダくんが『推し、燃ゆ』を読んだってTwitterに書いてて、相変わらずしっかりやってると感心したし、おれらもしっかりやろう!