一生、母の味方で居ようと誓った話(3)
言い合いの次の日は、
家族でスキー旅行をする日だった。
ホテルはずいぶん前から予約していたし、
なにより私たち子供のために、
スキー旅行は予定通り行われた。
近所のゲオで、
道中に見る映画を選んだ。
二重が綺麗な母の目は、
見たことないぐらいパンパンに腫れていて、
昨夜のことが現実なのだと
思い知らされる。
車に戻ると、
弟が、母に向かってこう言った。
「おかーさん、すごい目変だけどなんでー??」
車の中が、一瞬凍ったような気がした。
「花粉症が酷くて!目をかきすぎたのよ〜!」
母は明るく答えていたが、
うちは家族全員が花粉症なのに、
その嘘は無理がある。
誰も花粉症の症状が出ていないのだから。
目頭が熱くなる。
母の気持ちを慮ると、心臓が握りつぶされたような気持ちになった。
あれから15年。
父と母は、離婚はしなかった。
母は、父を許したのだ。
ただ、最近まで気づかなかったことがある。
母の薬指には、指輪がついていない。
ねぇ、お母さん。
私、2週間前に、結婚したよ。
貰うはずのボーナスを捨てて、
仕事も辞めて、
友達とも離れて、
遠い土地に引っ越して来たんだよ。
全部捨てて、結婚したんだ。
なのに、今になって、
旦那さんの浮気が発覚したよ。
おんなじだね。
(完)