圃場整備された水田にはどれくらい水生昆虫が生息しているのか?
現在国内で止水性の水生昆虫が絶滅の危機に瀕しているのは周知の通りで、神奈川県においても、かつては水田で普通に見られたらしいナミゲンゴロウやタガメが姿を消してからすでに久しい。これら止水性水生昆虫の減少の原因として、水田における強力な農薬の使用や圃場整備による乾田化、中干しの強化等の稲作の近代化の他、水田に付随するため池への侵略的外来種の侵入や護岸強化が挙げられている。このようなネガティブなイメージからか、水田の水生昆虫相の調査というと、里山で無農薬栽培を行っているような水田が対象となりがちである。実際のところ、平地に広がる圃場整備された水田の実態はどうなのだろうか?そのような身近にある慣行農業がおこなわれている普通の水田で、現在どのような水生昆虫が生息しているのかを把握するため、2021 年に神奈川県厚木市内の水田を調べてみた(対象は甲虫と大型の水生半翅のみ)。結果、シマゲン等の希少種は当然ながら見つからなかったが、甲虫で13種、水生半翅でコオイムシ(神奈川県絶滅危惧IB)の生息が確認できた。一部にタマガムシ(これも絶滅危惧IB)が多産しているところも発見。良くも悪くも、これが現状である。詳細は以下を参照。
齋藤孝明, 2022. 厚木市の水田に生息する水生昆虫(2021年の調査報告). 神奈川虫報 (206): 23-29.
コオイムシは、一時期確かに激減したが、その後増えており、農薬耐性を獲得した可能性もあるとか。近年西日本においてコガタノゲンゴロウが復活してきており、今後の水田の昆虫相の変化を注視する必要がある。
以下の写真は、すべて2021年5~6月の夜に厚木市内の水田を巡って撮影したものである。水生昆虫は夜行性の種が多いため、観察するには断然夜の方がよい。