#115 研究開発費の会計処理:なぜ医薬品業界はIFRS?
攻めのコストの2つめです。
研究開発費(R&D費)
これは費用処理でしょうか?資産計上でしょうか?
1999(平成11)年3月期までは、開発費について資産計上が認められていたました。
現在は、研究開発活動と将来の収益との対応関係が不確実であるという米国会計基準の考え方を踏襲し、研究開発費はすべて発生時に費用として処理します。
一方、IFRSにおいては、一定の開発費については資産計上します。
「研究から生じた無形資産を認識してはならず、これに関する支出は、発生時に費用として認識しなければならない」
「開発から生じた無形資産は、企業がIAS第38号に定めるすべての要件を立証できる場合に、これを資産として認識しなければならない」
まとめると、
日本基準、米国基準: 発生時に費用
IFRS:研究費 発生時に費用
IFRS:開発費 資産計上⇒一定期間で償却
ところで研究開発費ってどのくらい?
医薬品・・・ 武田薬品(2015)22%
効果のある新薬の生まれる確率1/2万5千(日本製薬工業協会)
上市までの研究開発費1千億円
自動車(トヨタ1兆円)
IT(アップル0.7兆円、Google1.2兆円)
さて、「研究開発費」に入らない研究開発費もあります。
トヨタ:研究開発費1.1兆円(2018/3)単独では無理な水準になったため、
M&Aで買収して「投資有価証券(投資その他資産)」7.7兆円しました。よってP/L「研究開発費」にはカウントされません。
まあ当たるか当たらないか “千三つ” と言います(せんだみつおはここから)
開発費の資産計上することもあります。これで研究開発費が小さくなることがあります。
たとえば、スクエア・エニックスの研究開発費(P/L「一般管理費」)は1桁小さい 12億円(2018.3)
アステラス製薬は2014/3よりIFRS⇒研究開発費の一部「その他の無形資産」に計上しました。その結果、研究開発費比率は20%⇒16%へ低下しました。
先に書いたようにIFRSであれば開発費を資産計上できます。
IFRSはのれん代の定期償却がないため、M&Aに積極的な企業が採用
日本基準は研究開発費は費用処理しなければならないが、IFRSでは開発費部分は資産計上し、一定期間で償却できる
よって、膨大な研究開発費がかかる医薬品業界でIFRSが採用されるのです。
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