#113 販管費も業界で異なるけど、全てカットすべきは間違い
広告宣伝費、研究開発費、従業員教育費、資源探索費などは回収不能です。
このお金は返ってこないので埋没費用=サンクコスト といいます。
会計上の費用かどうかとは別の話です。むしろ経済的な見方になります。
回収できないからリスクとか問題であるということもあります。
しかし、これは参入阻止の源泉になると考えるのです。
つまり「攻めのコスト」、「最大防御のコスト」になります。
“顧客創造の実現は、マーケティングとイノベーションだけである”(ドラッカー[1954]「現代の経営」)
この考え方からすると、営業販促活動費、広告宣伝費、研究開発費、情報化、人材投資、ビジネスモデルというものはそういった顧客創造の源泉になります。
これらは「販売費及び一般管理費」(販管費:SG&A)です。
つまり販管費は、すべて「無駄なもの」「カットするもの」という考えは間違っています。
なぜなら、お金の面から「無形資産」を形成するものが多いからです。
(ただし、お金を掛けなくても、人のアイデア、実行力、組織から無形資産も生まれますが・・・逆に無駄な人件費とかの販管費もある。)
つまり「無形資産」は、「攻めの販売費及び一般管理費」を凝縮したものと考えてもいいかもしれません。
原価率が低い業界は、ここのSG&Aへお金をつぎ込むことでライバルに勝とう、いや引き離そうとするわけです。
たとえば、医薬業界の研究開発費、食品業界のCM、金融業界の情報化投資、情報サービス業の人材投資などです。
これらは投資ではないので資産計上せず、毎期の費用になります。(開発費、ハードウェアは資産計上できる)
この経費によって利益率は低くなって、結局どの業界も同じくらいに落ち着きます。
これが各業界で原価率は違うのに利益率は同じくらいになってしまう理由です。
なお、各業界でシェアの低い企業、原価の高い企業、順位の低い企業はこういうお金を使う余裕はありません。したがって、一見、現在の利益率は同じくらいですが、将来の期待リターンで差が出てきます。
ですから企業価値はこういうところを見ないといけません。
なぜならここが無形資産となって、株価の時価-簿価となるからです。
支払っていない会社は「貧すれば鈍する」のです。
いつまでも業界順位が変わらないのはこのためです。
ただし、かけた費用が将来必ずリターンをもたらすとは限りません。
しかも環境は刻刻変わっていきます。
ここが事業投資の難しいところです。
ここのところはまた後で解説します。