#205 パンとサーカス(その2)
前回 #204(その1) は中嶋悟氏のF1がサーカスというお話でした。
ところで「サーカス」というのはどこから来たのでしょうか?
ただの喩えではありません。
ローマ史を勉強した人ならわかるはずです。
詩人ユウェナリスが当時のローマ社会の世相を批判した有名なものです。
ネロからハドリアヌスあたりの時代。
格差が大きくなった時代です。無産市民が急増していました。
権力者から無償で与えられる「パン(=食糧、穀物)」と「サーカス(=娯楽、見世物)」によって、ローマ市民が政治的盲目になっていることを皮肉的に表現しました。
つまり「愚民政策」あるいはそれに踊らされる「愚民」の話です。
当時のサーカスは曲芸ではなくて戦車競走の楕円コースのことです。だからF1がぴったりですね。
共和制の末期ですから皇帝ではなく、貴族が与えました。よってパンは「再分配」を意味していました。
貴族は富を誇示するために奴隷を育成して競技会を主催するようになりました。専用の競技場をつくり市民の娯楽になっていきました。市民は熱狂しました。平和な時代ほど残酷な殺し合いになったそうです。
愚民化された人々は、政治に興味を示さないか、権威主義に傾倒して、民主主義を軽んじるようになりました。
その結果、権力者にあまり逆らわなくなります。それで権力者は国を独裁的に運営しやすくなるということでした。
ただし、近代国家に当てはめるときは、教育や情報などがあるので独裁運営しやすくなるという事はありませんが、権威主義国家化しやすくなる、と修正されます。
さて、現代の日本を考えると、格差が大きくなって、貧困層が増えています。お金を配る人も出てきました。
「分配」と呼ばれる「再分配」が行われようとされています。
「日本の食はレベル高い」ので皆さん関心も高いですね。テレビでは「おいしい」が連発されています。パンですね。
国民はエンタメしか興味なく、音楽、ダンス、お笑いで喜ばし、スポーツ、映画でも観せておけば投票にはいきません。サーカスですね。
オリンピックなどを盛んに誘致して、競技場をつくります。
権威主義は・・・あるな。学歴、留学、メガ銀行や有名コンサル出身がえらい、大学教授や受賞者のお話を聞こうとか。
たしかに今の日本は、古代ローマと同じく「パンとサーカス」の国になっています。
ローマ帝国は滅びました。