「マンモスを狩るための組織」と「ピラミッドを建てるための組織」
世の中には色々なタイプの組織があります。しかし、ドラッカーは二つのタイプの組織が基本形であり、それらの応用・組み合わせによって多様な組織になると考えていました。
「マンモスを狩る組織」とは「チーム」のことです。「マンモスを狩る」仕事は数十万年前からありますから、最も古い組織形態ということになります。
オオカミやライオンなどの野生動物も集団で狩りをしますから、多くの生物に早くから刷り込まれていた組織形態と言えるかもしれません。
これに対し、「ピラミッドを建てるための組織」とは「職能別組織(機能別組織)」のことです。同じような仕事をする人たちのグループ同士が連携する組織形態です。
会社などの大組織は、企画、開発、営業、製造、管理といった部署に分かれています。それぞれの部署には同じような仕事をする人たちが集まっています。
会社の名刺には、「営業部 丸山△男」と肩書が書かれています。その肩書は、職能別組織における位置づけを示しています。
「ピラミッドを建てるため」ですから、人間社会が文明化されたことで登場した、人類史の中では比較的新しい組織形態ということになります。
「マンモスを狩るための組織」は柔軟性に富んでおり、状況の変化によく対応します。しかし、メンバーには主体性が求められますし、お互いの役割を調整するための手間が増えるという特徴があります。安定性・効率性に欠けるという弱点があるのです。
これに対し、「ピラミッドを建てるための組織」は安定的・効率的に仕事を進めるのに適しています。明確で大きな仕事をこなすのに適しています。しかし、柔軟性に欠けるため、変化の激しい状況ではあまりうまく対応できません。
このように二つの組織の特徴は正反対です。そして、多くの組織はこの二つの組織形態を併用しています。組織が問題を抱えやすい原因は、この二つの組織形態を両立させることが難しいことから生じます。真逆の組織が同居するわけですから、うまくいかなくて当たり前なのです。
100点満点の組織形態はありません。どのような組織形態も二つの基本的な組織の組み合わせですが、うまくいっている組織も状況が変わればうまくいかなくなるものです。
しかし、組織の二つの基本形を知り、その長所と短所をわきまえていれば、その弊害を少なくすることは可能でしょう。