「独自性」とは、「ライバルと違うことをする」という意味ではない
「独自性」はビジネスシーンでよく使われる言葉です。しかし、多くの人が「独自性」の意味を勘違いしています。最も多い勘違いとは、「ライバルと違うことをする」というものです。
結果的にはそうなるのですが、ビジネスなどにおける考え方としては誤りです。「ライバルと違うことをする」と思っていると間違った行動をしてしまうリスクがあるからです。
「独自性」とは、「相手(顧客)から見て意味のある違い」という意味です。いくらライバルと違ったことをしてみても、それが顧客にとって意味のある違いでなければ、「独自性」があるとは言えません。
例えば、一般の人とマニアの人とでは価値観が全く違います。マニアが感激するような“違い”の多くは一般の人にとって、意味のある違いとは言えないでしょう。同じことは、男性と女性、若い人と高齢者、都会人と地方の人、アウトドア派とインドア派‥さまざまな人たち同士の間にも当てはまります。
「独自性」とは選んだ相手によって違ってくる相対的なものです。選んだ相手の価値観によって「独自性」があるかどうかが決まります。
「独自性」は相手が決めてくれるものです。いくら自分がこだわりを持っていても、そのこだわりを相手が持っていなければ、「独自性」があるとはいえません。
しかし、多くの人が「独自性」を自分のこだわりだけで判断しています。自分では、「会心の企画」と思ったプレゼンが全く評価されなかったり、「大ヒット間違いなし」と思った新商品が、全く売れなかったりすることも珍しくありません。
人や組織が社会を生き抜くためには成果をあげることが必要です。成果をあげるとは価値を生むことです。しかし、価値は人によって受け止め方がさまざまです。その人の価値基準に沿った提案でなければ、価値とは認めてはもらえません。
「独自性」とは「相手から見た意味のある違い」です。結果的には人と違ったものになるのですが、それが意味のある違いというためには自分が選んだ相手の価値基準を知らなければなりません。
ゴッホは生きている間に絵が1枚しか売れなかったそうです。ゴッホは、その当時の人にとって意味のある違いを伝えることができなかったのです。ゴッホの死後、世間の価値観が変わり、ゴッホの絵に意味のある違いが認められるようになったのです。
どうせなら、後世の人に認められるよりも、現在の人たちに認められるような独自性を持ちたいものです。