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孤独について 13.谷川俊太郎

私も”後期老齢者”が近づき、これからおとずれるかもしれない「おひとりさま=孤独」の時間をどうすごせばよいか考える必要を感じています。
そこで、「こんな本を読んだ 番外篇」で、さまざまな人の著書をもとに「孤独」について考えています。第13回は谷川俊太郎の本から。

「孤独について」の目次ページはこちらです

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【独断的結論】詩人は問いを投げかける

13.谷川俊太郎

谷川さんの「孤独」という言葉を含む次の二編の詩から考えてみます。

二十億光年の孤独』

人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする

火星人は小さな球の上で
何をしているか 僕は知らない
(或いはネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ

万有引力とは
ひき合う孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う

宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした

『二十億光年の孤独』所収

孤独

この孤独は誰にも
邪魔されたくない
と思った森の中のひとりの午後

そのひとときを支えてくれる いくつもの顔が浮かんだ

今はここにいて欲しくない
でもいつもそこにいて欲しい
いてくれるだけでいい
いてくれていると信じたい

嫌われているとしても
嫌われることでひとりではない
忘れられているとしても
私は忘れない

孤独はひとりではない

『こころ』所収

詩はかならずしも論理的ではないので、読みとくことはやさしくはありません。ただ、谷川さんの詩のことばは平易かつ明晰です。なんとか詩人のこころを想像してみたいと思います。

谷川さんの詩の特徴は、まず、自然や宇宙との深いつながりが見られることです。孤独の中で自然との対話や共鳴が表現されています。自然と対峙しながらも、つつまれているようです。透明感と寂寥感、一体感が同居しています。

また、谷川さんの詩には、自分への問いかけがしばしばみられます。感情や思考、孤独感についてのことばは、読者の内省をもうながします。

谷川さんは詩の中で多くの問いをなげかけます。孤独は、このような問いへの答えを探求するひとつの世界としてとらえられます。

したがって、谷川さんにとって孤独は、内省や自然とのつながり、美や哲学的な探求など、多様な面を持って表現されます。ひるがえって、彼の詩は読者にも深い思考をうながし、人間の存在や孤独の意味について考えさせることが多々あります。

詩は、孤独の意味やそのなぐさめ方を教えてくれるものではありませんが、自分で考える機会をあたえてくれるものです。

※詩を全文引用することは著作権上問題があるかもしれませんが、読まないとわからないので、あえて引用しております。


令和3年発行のアンソロジー詩集です。今回とりあげた詩も所収されています。

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