2021年1月1日
本日読んだ本の記録です。
1 森裕之他篇『現代社会資本論』有斐閣 PP.224-244
槌田洋「社会資本と公共サービス・参加型予算」の章。社会資本と一体となって提供される公共サービスを理論的に整理した上で、その公共サービスの運営や市民参加のあり方について、事例に基づいて論じられている。
槌田氏は公共サービスをビクター・ペトロフに依拠して4つに分類している。①給付型②民営型③地縁型④協働型である。日本社会は、伝統的に①と③を中心に公共サービスを展開してきたが、財政状況の悪化などの背景から②の民営型にシフトしていっていると整理している。一方で、今後の日本型福祉社会を考える中では、住民の地域活動を当事者、専門機関、他の担い手からなるシステムを構想する協働型が重要になってくると整理している。
槌田氏は、その前提に立ち、子育て支援システムの歴史的経緯から社会要請の変化に伴って、子育てサービスが変化していき、協働型サービスにアップグレードされてきていることを吹田市の事例から説明している。
こうした事例を踏まえつつ、日本における参加型予算のあり方についても論を進めており、欧米型の討議デモクラシーではない「学習と交流」による公共サービスの展開について事例を持って説明している。
章全体を通しては、理論的な枠組みを整理してから事例を持って論を展開し、納得性の高い文章となっている。槌田氏は、「学習と交流」というキーワードで日本における公共サービスの展開を構想しており、それは欧米的な討議デモクラシーとは区別している。個人的には、そのキーワードに新規性を感じ、デモクラシーのあり方を考えさせられた。
2 半藤一利『世界史のなかの昭和氏』平凡社PP.247-280
地道に読み進めている本書。時代的には、ドイツと旧ソ連が独ソ不可侵条約を締結するまでの世界史の情勢が描かれている。
歴史にifはご法度という前置きを置きつつ、歴史の転換点は小さな出来事や情報伝達の間違いなど人物描写も含めながら歴史のダイナミズムにダイブすることができるのが昭和史シリーズの醍醐味。
純粋に読み物として面白い。
3 マーク・J・エプスタイン『社会的インパクトとは何か』英治出版~PP.95
博士論文のための本。勉強中。
あるアウトプットがどのような成果として現れるのか、またそれをどのように測ることができるのか。そうしたインパクトを効果的に測定するために必要な思考方法などが説明されている。
特に、社会的インパクト(活動や投資によって生み出される社会的・環境的変化。ex.平等、生活、貧困、正義etc)をどのように測定することができるのかが本書の主題である。そのためには、社会的インパクト創造サイクルが重要であると述べられている。そのサイクルは、①何に投資をするのか②どの問題に取り組むのか③どのような手順を踏むのか④成功はどのように測定するのか⑤インパクトを大きくするにはどうすればいいのかという5つの主題をサイクルしていくことである。
まだまだ最初の方であるが、細かく整理されているため、論理的ではあるが少し冗長的でもある。関係なさそうな箇所は飛ばしつつ、「測定」の章に早く入りたい。
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