「大きな音」
「みぃぃなぁぁぁさぁぁぁんんん」
そんな大声がいきなり響き渡るとどうなるだろう。
"飛びあがる"
それが私だ。
大きな音は恐い。私の体を容易にこわばらせる。
嫌いな音をかき消すために無理やり使用するぐらいだ。
今日は新年度のオリエンテーションの日。
他学年と共にいくつもの動画を見なければいけない。
「最後の動画」
それはクラブ紹介の動画だった。
若者らしい元気な声。
どのクラブも熱を入れて作ったことがよく分かる素晴らしい動画達。。。
微笑ましいまま終わりを迎えるかと思われたが、、
いきなり音声出力が大きくなった。
「みぃぃなぁぁぁさぁぁぁんんん(音割れ」
冒頭のあの言葉が鳴り響く。
咄嗟に耳を塞いだが
かえって心臓の音がよく聞こえる。
愚策だった。
塞ぐのを辞めても
頭が真っ白になっていて、
なにも内容が入ってこない。
落ち着く間もないまま、次のクラブの紹介に入る。
また爆音が響き渡り、愚策だと知っていても耳を塞ぎ続けた。
今日から体験入部は始まる。
まだ未所属の私も参加しようかと、そう思っていたが
完全に小心者になってしまった私には
人を避けることで精一杯だった。
「これほど音に驚く日はもう来ない。」
そう思って明日からはまた前を向こう。
後ろを振り返る時間など無くなるのだから。
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