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「受け口」の初心者向けレクチャー方法

株式会社百森の齋藤です。

弊社では西粟倉村の山林を管理する森林管理業務の他に、山林をアクティビティの場として活用していく目的で年に数回、少人数制のチェンソー講習(通称:ロギングツアー)を開催しています。

そのロギングツアーで、私は実技講師をさせてもらっています。その中で一番苦労したのが、伐倒するために最も重要な「受け口」の作り方を、チェンソー初心者である参加者にどうレクチャーしていくかという点です。

この記事では、ロギングツアーを開催する中で、私が初心者でも最短で受け口が作れるようになる方法を紹介させていただこうと思います。

ロギングツアーとは?

ロギングツアーとは、弊社が毎年不定期に開催している3日間のチェンソー講習会です。

「チェンソーによる伐木等特別教育」に沿った内容となっており、修了すると伐木などの業務を行うことができるようになります。

また、少人数制(最大4人まで)にすることで、参加者一人一人と顔を合わせながらほぼマンツーマンで指導できる体制を取っています。

眠くて退屈な特別教育ではなく、伐倒体験ツアーとして全身で森林を楽しんでもらうことを第一に考えて開催しています。これまでの参加者の方々からも好評をいただいています。

ロギングツアーの様子。社有林の間伐も兼ねています。

受け口とは?

受け口とは、立ち木を伐倒する上で最も重要な伐倒方向を決める切り込みの事です。追い口を入れて受け口が閉じることで、その方向へ倒れます。

受け口を作るには2方向から切り込み、切り先をしっかりと合わせる必要があります。これがすごく難しいんです。受け口の作り方は大きく2パターンあり、先に水平切りしてから斜め切りで合わせるか、斜め切りしてから水平切りで合わせるかです。

伐倒の手順①
伐倒の手順②
伐倒の手順③

私の経験上、本職の方は先に水平切りしてから斜め切りで合わせて受け口を作る人が多い印象です。チェンソーのボディには「ガンマーク」というチェンソーバーに対して90度の方向を示す補助線がついていることが多く、これを伐倒時の照準として使います。

出典:岐阜県立森林文化アカデミー

私が以前に在学していた林業大学校でも、先に水平切りしながらガンマークで伐倒方向を狙えと教えられましたし、おそらく林業従事者の講習会や新人教育でもこのように教わることが多いのではないかと思います。

レクチャー方法の模索

最初は私もこれに倣い、ロギングツアーでも先に水平切りしてから斜め切りで合わせるやり方でレクチャーしてみたのですが、そもそも水平切りすること自体が初心者にはめちゃめちゃ難易度が高いということに気付きました。山の急傾斜で足場の悪い場所で行うので猶更です。

さらに、ロギングツアーで使用しているチェンソーにはガンマークが付いていない機体もあり、このやり方だと参加者全員を限られた練習時間内で楽しみながら習得するのにはもう少し工夫が必要そうでした。

色々と試した結果、先に斜め切りしてから水平切りしたパターンの方が初心者でも綺麗に受け口が作れるということが分かってきました。

手順としては、まず先に斜め切りをして切り終わりの2点が水平になるよう調整します。水平切りはXY軸2方向に気を付けなければなりませんが、斜め切りはX軸方向さえ合っていればY軸方向は比較的ミスが許されますし、目視で確認しながらの微修正もしやすく、気が済むまで調整することができます。本職と違い、時間はたくさんあります。

ここできちんと斜め切りのX軸方向が水平になっていれば、あとは切り終わりの2点を結ぶように切るだけで、理屈上は水平切りもしっかりと水平になっているはずです。

最後に

実際、この方法でレクチャーすると驚くほど短時間で皆さん綺麗な受け口を作れるようになりました。中には私より上手く上達される参加者の方もおられました。

わたしたちのロギングツアーはスキューバダイビングやスカイダイビングのように、仕事で使えるようになるということではなく、しっかりと満足してもらうことが主な目的です(参加される方は仕事でチェンソーを使う予定はなく、楽しみに来られる方がほとんどです)。

そんな中でも、曖昧な感覚的な説明ではなく、理屈を論理的に説明することができるようにすることと、目的に合わせて説明の方法を修正・磨いていくことが、安全を保ちつつ初心者にも分かりやすく伝えるのには大事ですね。

興味がある方は、是非一度試してみてください。




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