山林管理におけるGNSS機器の活用方法について
株式会社百森の齋藤です。
弊社では二年ほど前からGNSS機器を導入し、主に施業団地の設計業務で使用しています。特にかなりの時間と手間を必要としていた周囲測量と路網設計の作業時間を劇的に短縮することができ、私個人としては大変重宝しています。まさに文明の利器と言ったところでしょうか。
そこで今回は弊社のGNSS機器活用方法についてご紹介します。
GNSSとは
GNSSとは、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System)の呼称です。
概要を要約すると、複数の衛星を使って位置情報を測定できるので、天候や障害物に左右されず、現在地を数センチ程度の誤差で測位できるという代物です。GPSの上位互換的なものと思ってください。上方が密閉した林内や深い谷間ではGPSだけだと精度が著しく悪くなってしまいますが、GNSSの場合は精度に大きな差は見られません。
GNSS機器を用いて面積を計測する
林業の測量は、測定範囲の周囲を測量機器を使って二人一組で歩き面積を計測します。山の場合は数cm単位の精度は求められないので簡易測量とも呼ばれます。
弊社も以前はレーザー計測機器を用いてコンパス測量を行っていました。それはそれで従来のアナログコンパス測量より格段にスピードは速かったのですが、コンパスマンとポールマンの二人一組で行わなければならない点は同じでした。
一方でGNSS測量は測位した測点を線で結び面にすることで面積を計測します。GNSS測量の場合は測点の座標が誤差3m以内の品質であれば合格とみなされます。
そのためGNSS受信機だけ持って行けば一人でも測量できるので、単独で行えるという利点があります。また、コンパス測量だと測点順に回る必要がありましたが、GNSS測量は測点を線で繋いで面にさえすれば面積が計測できるので、測点順に回る必要がありません。
なので踏査のついでに測定範囲の周囲に測点だけ落としておけば、あとでスマホ端末に入れてある測量ソフトを操作するだけで簡単に面積を計測できます。
GNSS機器が複数セットあれば、測量ソフトに測点データをインポートできるので、例えば大面積の範囲を測量する場合、起点からそれぞれ時計回りと反時計回りに二手に分かれて行えば時間も労力も半分に短縮できます。
GNSS機器を用いて森林作業道を設計する
山主さんに施業承諾を貰いつつ、ある程度山を集約化できれば伐採した木材を搬出するための森林作業道を設計していきます。
森林作業道は木材を搬出する道としてだけでなく、今後、我々が山を見回ったり、山主さんが自分の山を見に上がって来られる管理道としての役割もあります。なので路網設計の際は利便性や安全性も考慮しつつ、なるべく縦断勾配が急になったり無理な線形にならないように意識しています。それ以外にも、路網密度、作業道の間隔、搬出距離、地形、土質、岩、林相なども考慮しながら路網設計を進めていきます。
その中で実際に山を歩きながら路網の線形を決めていくわけですが(道が入るセンターの立木に目印テープを巻いていきます)、以前は現在地が大体でしか分からなかったため、割とアバウトな作業道の設計図面を作成していたので、いざ請負業者さんが施業に入ると「何か現場の目印と図面の線形が違うんじゃが…見に来てくれんか?」と呼び出しをくらったり、自分が思い描いていた線形に仕上がらなかったりして反省することも多々ありました。
しかし、GNSS受信機とスマホ端末を携行することでリアルタイムで現在地を確認しながら踏査できるようになり、「こことここの線の間隔が思っていたよりもだいぶ近くなったな…もう少し離すか」とか「ここの線が予定していた高さまで全然上がってないな…もう少し手前から上げてくるか」みたいな判断を瞬時にできるため、修正に右往左往することがなくなりました。
今では設計した線形通りの仕上がりになるようになり、現場との齟齬もなくなりました。
最後に
GNSS機器の活用方法としては他にも、山の境界位置の特定や施業前写真の撮影位置を記録したりと使い方次第でタスクの省力化につながっています。受信機も小型で軽量なので山に入る時はなるべく携行するようにしています。暗くなっても山で迷わずに済みますしね。山林管理のツールとしては本当に便利なので林業業界の方には是非オススメしたいです。