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鶏が捌かれるのを子供の頃見た話し
子供の頃住んでた家の近くに商店街があった。長い路地一本分店がズラーッとスーパーから始まりウズベキスタン料理の店まで並んでいた。
その中の一つに鶏を売る店があった。小さな店内に壁一面鳥籠がズラッと並んでいて中には鶏達がひしめき合っていた。数が多いのでとにかくうるさかったし、臭かった。あの店の前を通る時は息を殺して鳥籠の中の鶏を横目に見ながら足早に通ったものだ。
ある日一人おつかいをしていた時その店に客があって鳥籠の中の鶏をニ羽注文した。店主は鳥籠の中に手を突っ込むとあんなにギッシリ入っていたのにサーッとスペースができて、にも関わらずその中の一羽を首から掴んで出してくるとそのまま手で掴んだままスパッとナイフで首をちょん切って逆さにして台に空いてある穴の中に突っ込んだ。
首を切られても鶏はしばらく足と翼をバタつかせていたがやがてこと切れた。私はその光景に目を釘付けにされたが、店主がもう1羽を捌くの見られずその場から逃げた。
あの出来事はは大人になった今でも鮮明に覚えている。
その日からあの店の前を通る時は下を向いて早足に横切るようになった。
確かに可哀想だし他の鶏の前で捌くのも残酷だと思ったが、そういう風に私達は動物を食べているのかと思った。
新しく引っ越した先では鶏を放し飼いしている家があって、よく道路とかを闊歩しているのを見かけてはその後を追いかける。しかしあいつらはものすごく足が速いのとどんな壁もヒョイって飛び乗ってしまうのでどんなに頑張っても捕まえてられたことはない。あんなに気の毒だと思ったのに追いかけるなんて、いやいや愛嬌があるし触ってみたいんだよ。それにどうせ捕まえてられっこないが向こうからしてみてばこれ以上迷惑な事はないだろう。
その後ひよこをニ羽飼ったがニ羽共死んでしまってとても悲しかった。やんちゃで一緒に飼っていた猫の餌を奪うような奴らだったが可愛かった。
父も結婚したての頃鶏を一羽買ってきて庭に放し飼いしていたら逃げたというので父は一日中駆け回ってクタクタになりながら捕まえたがその次の日も逃げられたのでもう諦めたと母から聞いた。
この様にことごとく鶏とは縁が出来にくいがそれでいい、あんなに可愛がったら捌くなんて私にはできない。
遠くからてみて可愛いなとか変なやつだなと思うぐらいで十分だ。