#45 UNIQUE CLOTHING
卯月、名ばかりの昇進で辞令を受けた。
もはや昭和の儀式といっても過言ではない辞令交付のためにスーツをあつらえるのもどうかと思ったが、ユニクロでスーツを作ったところ、とても具合がよかった。
昨年冬、高校の卒業式と大学の入学式に必要だろうからと、息子がユニクロのカスタムオーダーというシステムでスーツをあつらえた。早く作っておいた方がいいと妻がすすめた。ユニクロの人に聞いたところ、3月だと間に合わないこともあるらしいから、やはり妻はすごい。できあがったスーツは、よく似合っていた。
私は職場ではチノパンやスラックスにセットアップでないジャケットなどを着ることが多い。持っているスーツは、あまり袖を通す機会がなかった、ゆったりしたタイプの昔のものだ。息子のスーツ姿をみて、心機一転の春に新しいスーツは悪くない気がした。
ユニクロにいって採寸してもらい、その数値をもとに自分でネットでオーダーした。服飾にはあまり詳しくないが、ユニクロのカスタムオーダーは、体の各部を採寸し、それに合わせ、いちから服を仕立てるいわゆるオーダーメイドとは違う。ユニクロはあらかじめさまざまな体型に合わせた服を用意しておき、店舗で採寸して、体型にぴったり合うものを選ぶ、というシステムだと理解している。だからスーツを作った、あつらえた、という表現は正確ではないのだろう。違ったらごめんなさい。
私は筋肉量が多くかなり厚みのある体(端的にいうと太っている)だが、届いたスーツは体にぴったりで、それなりにすっきり見える。当然と言えば当然だが、高品質をうたっている明るいグレーのストレッチウールの生地は、動いた感じも着心地も肌触りもかなりいい。とてもよかったので、色違いのもう少し安価なセットアップも買った。素人目には安っぽさは感じられない。さほど高いものでもないので、これから着倒していきたい。
内澤旬子「着せる女」(本の雑誌社)を読んで、オーダーメイドのスーツを作ってみたいと思うことはあったが、まあそんな高いシロモノを着ていく場所がない。間違いなく宝の持ち腐れになるので、実現はしていない。この本、とてもおもしろいので服やファッションに興味のある方はぜひどうぞ。
偉そうにいえる立場ではないが、ユニクロに行くと、おしゃれな中高年男性が増えたな、と感じる。特におじいちゃんがよく似合う服を着ている気がする。
ふだん着ているものの8割くらいは、ユニクロになってしまった。近年はセレクトショップでなどで服を選ぶ気力も失せた。「機能性」という言葉には弱い気がする。ユニクロ以外で持っている服は、ノースフェイスやアークテリクスなどちょいお高めのアウトドアブランドのものが多い。だが雨の日はブロックテックのフードをかぶって、というように、アウトドア要素もユニクロが取って代わろうとしている。
スティーブ・ジョブズとは全然違うけど、肌着や靴下は、サイズも色も同じものをユニクロで買う。選ぶのが面倒なのと、靴下は片方が破れても、残った方を活用できると思ったからだ。
これはいいアイデアだ、と思ったものの、今のところ片方だけ破れるという事態は思ったほど起きない。2年前片方に穴が開いて、生き残ったもう一方の靴下は、いまだにさみしく単独で出番を待っている。