「俺の白いサーバント」ショートショート(1200字)
背後から忍び寄り俺は敵の喉元にそれを放り込んだ
「ギャー!!」
また1人やった
次の獲物を探しつつ俺は新しい神器を手に入れる。
それは屋根の下に垂れ下がり大きさはゆうに背丈をも超えている。
まさに神の所業だ。
俺は慎重にそれを手に入れるが残念ながらとてももろい。
しかしながら敵に与えるインパクトは抜群だ。
誰しも俺のその神器を見て唇を噛みしめ悔しがる、自分の背丈ほどあるそれは大きな氷の神器。
人はそれを「つらら」と呼ぶ。
得意げに振り回し俺は帰路につく。
ふと背後から気配、瞬間俺の背中にも雪が放り込まれた
「ヒッャ!」
変な声が出て身動きが取れなくなった。
冬の下校時間は戦争だ。
油断してると凶器と化す湿らせた雪玉なんかも飛び交う。
今日は形勢が最悪だ、敵から逃げるためにやむを得ない俺は坂道でランドセルに座りソリのように坂を下り逃げた。
これは名誉ある撤退だ。
ランドセルの中は雪まみれでこっぴどく叱られた。
母さんに俺たちの戦いの意味がわかるまい。
冬の下校は戦争だ、使えるものは全て使う。
その夜夢を見た。
白い世界だ、その真ん中で俺が体育座りしてるのを客観的に観ている。
どこからともなく声が聞こえる。
「お前には人を導く力がある。たくさんのサーバントを作り集めなさい、仲間にして人を導きなさい」
「あなたは神なのか?」
「たくさん作りなさい、作りなさい、作りなさい…」
エコーがかかり神は見えなくなった。
俺は次の日から敵と戦いながらもサーバントをたくさん作り集めることにした。
しかし敵もそれを阻止しようとする。
サーバントの亡骸にはたくさんの足跡がついていた。
悔しさをバネにしてサーバントを最強の戦士とすべく水をかけて鍛えあげた。
一晩おくと岩のように強靭な体を手に入れていた。
俺は少し離れ敵の動向をはかる。
家の前に構える門番はたくましく太陽に輝いていた。
「またあいつ雪だるま作ってるぜ!やっちまえ!」
「おりゃあ!!」
敵は飛び蹴りを食らわし硬く凍った雪だるまに弾き返される
「いてー!チッ!」
足を押さえて舌打ち、その場を立ち去った。
だか、どうしても敵わない敵が現れた。
3月にもなるとあんなに固められたサーバント達はどんどん崩れてゆく。
そのタイミングを見計らっていたかのように敵は一斉に駆逐した。
俺はその光景に悔しさをぶつける
「ちっくしょう!!!」
いつかリベンジしてやる。
その戦いは20年以上続いている。
雪が降るたびに反射的に雪だるまを作るが壊される、その繰り返しである。
だが、共闘する仲間は増えた。
今住んでる街ではめったに雪が降らないが、ひとたび雪ぐ降るとたくさんの雪だるまが出来上がる。
俺からは指示はしていないのだが出来上がる。
すべて俺たちのサーバントだ。
明るい時間の金剛山のライブカメラを見て欲しい。
今の俺たちのサーバント達の勇姿が見られる。
だがまだ足りない。
あと半年くらいで戦力が揃うだろうか。
俺はこの仲間たちとこの国を守るために戦うのだ。