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「スマートマスク」


2020年代より世界を震撼しているウィルスとの戦い。

10年後経ってなお、人々は今だにウィルスの恐怖に怯え、マスクをする生活を強いられていた。

スマートマスクが完成するまでは。

当初と違い、見た目はもうマスクではない。

15歳以上になると政府から支給される様になった小さな端末で、鼻の奥に装着される。

医師により鼻腔内に設置されるが、呼吸を阻害したりと言った違和感はなく、
空気中のイオンをコントロールし、体全体にウィルスを寄せ付けないというものだった。

他にも様々な体のデータを検出したり、自動車や航空機、電車などの操縦者の体に異常があった場合など、即自動運転や自動飛行に切り替え安全に停車、オンラインで通報、事故を未然に防いだりする機能がある。

だが、急速に普及した要因になったのは、一足先に普及したスマートグラスに欠かせない端末であるから他ならない。

今、俺の目の前の視界の端にはたくさんの仮想アイコンが並んでいる。 
視線を送ったり、指を動かすと操作が出来るのだ。

現在は当たり前となったコンタクトレンズ型のスマートグラスで、映像コンテンツやSNSが目の前の空間に表示される様になった。

画期的だったのはリンクするスマートマスクの機能で様々な匂いまでバーチャルで再現された。

骨伝導の機能もあり、音声もクリアに耳から聴こえてくるから不思議だ。

もうイヤホンも過去の遺物となり必要なくなった。

南国の海の映像を見ていると、海の音や匂い、手元のフルーツの香りまでが再現できたりもする。

VR空間が現実との完璧なまでのコラボレーションだ。

俺は学会の時間まで、公園のベンチで南国の海にいる気分でいたのだが着信が入った。

視界には半透明で「音声通信中」と空間に浮かんでいる。

部下から研究所で発生した、小さなバグについての報告を受けていた。

「じゃあ今から行ってくる、研究所のほうは問題ないか?」

「いよいよですね、センセーショナルな内容ですし、きっと明日のニュースは、先生の記事で埋め尽くされますね」

「それと、プログラムのバグは修正が終わったので、問題ないと報告されています」

「よしっ!!引き続き監視、よろしく頼む!」

俺は空間をナイフで切るようにスワイプし、通話を終了し立ち上がる。

目の前には巨大なビル。

感染症対策を目的とした政府直轄の巨大なビルだ。

これから感染症学会の公聴会の公述人として、壇上に立つ。

長年の研究成果を発表する時が来た。


ーーーー

「ウィルスは、まるで意思を持ったかのように猛烈に急速に進化しています」

「その進化の速度は、人間の進化の速度をはるかに超えていて、極めて興味深い」

「しかしもう怖くはない!研究所では、変異したウィルスを私達が開発したAIで即座に対処することが可能になりました!」

「これからの時代はどんなウィルスが現れても、一瞬で死滅させることが出来ます!」

俺は大きく息を吸い

「もうマスクはいらない! 私達が開発したスマートマスクとAIシステムがウィルスの脅威に打ち勝つ事が出来きました!!」

会場からは、割れんばかりの拍手が上がる。

ここの学会を聞きに来ている研究者たちの中には、仲間や家族をウィルスで亡くしたものも多い。


一方、ネット上では反論意見を流すものも多かった。

「オンラインで人間を監視する為のシステムだ!」

「成人の中で著しく免疫力が低下している!」

「ウィルスのDNAを解析して自分のAIに組み込んでいる!」


都市伝説的な噂を流すものから、的を得ているような内容もあった。

俺が開発したAIは、ウィルスのDNAパターンを模していて、とんでもない速度で学習し続けるAIだ。

しかし完璧なまでの対策を講じてきた。

「全てが完璧に機能する完全なシステムを、いったい俺がどれだけの時間を費やして作ったと思ってるんだよ」

鼻で軽く笑い画面をスワイプし消す。

ーーーー

政府直轄で運営されている感染症学会の巨大ビル、その内部にある研究所の地下深く。

広大な空間。

世界最高峰のコンピューターと無数に並ぶサーバーは、あらゆるデータが蓄積された、さながらデータ化された国立図書館だ。

暗がりの中で無数のサーバーが整然と並ぶ。

無数のグリーンのライトが夏の蛍の様にゆっくり点滅している。


その時一つ、突然真っ赤のライトが光を放ちフル稼働し始めた。

隣接するサーバーも点、点、点々と赤く光り始めその後、加速度的に広がり始め一帯を赤い光で空間を染めた。

ビルの中は闇に包まれる。

モニター突然が白く光った。


この日、人間の進化の歴史を超え続けたウィルスは、初めてネットワークに侵入することを成功させた。

ウィルスは生命を得た。

人間に対し最後の宣戦布告をする。


あとがき

スマートグラスやコンタクト型のスマートグラス、既に発売されてたり、プロトタイプが発表されてたりしています。

近い将来に、手に持つスマホは別な何かに、とって変わっている日は近いように思います。

iPhoneが発表されたのが2007年。

たった10年ちょっとで、想像もつかない未来が訪れている。そんな未来をを想像してこの作品をつくりました。

イオン操作による製品特許など

シャープが開発した『プラズマクラスター』は、同社は、東京大学、広島大学、大阪市立大学、ハーバード大学、ソウル大学など国内外の複数機関で研究を行い効果を実証しているとしている。新型H1N1インフルエンザウイルスに対しても2時間の照射で99.9%抑制するなどの効果を検証している。

スマートグラスについて

2020一年現在世界中の各メーカーがこぞって開発している、現在も多くの製品が存在し、Apple社からも「登場が近い」と噂されている。問題となっているのが、撮影用カメラを搭載することで画像認識などで外部からの情報を得たいのだが、プライバシーの問題などもありなかなか実施できていないと言う話もある。
この辺は中国企業の方が開発が盛んである。

“スカウター”みたいなARグラス、中国OPPOが発表 2022年に限定発売
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2112/14/news166.html

未来のディスプレイは、コンタクトレンズの姿でやってくる 

https://wired.jp/2020/01/18/mojo-vision-smart-contact-lens/

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