「コンビニ作法」 ショートショート【1100字】
「いらっしゃいませ!」
毎日どこかしらのコンビニに必ず寄ってます。
元気な明るい挨拶の店員さん達にぺこっとおじぎをしつつ注目を浴びるのは実にキツいです。
すぐに右折し本棚の前を通ります。
チラリと見ると気になる見出しがあるが立ち読みはしないです。
いやその勇気が全くないのです。
「あ」
立ち読みしてる人と目が合った。
否定はしてませんよ、勇気が無いだけです。本を閉じられたけど覗いてませんよ。可愛いアニメキャラの表紙で自分も内容が気になります。
冷蔵庫を開けほうじ茶に手をかけ引き抜くがジャスミン茶も気になります。
「よしジャスミンにしましょう」
ほうじ茶を戻そうとして
「あ」
奥で補充してる店員さんと目が合ってしまいました。補充済みだと戻したらガチャンって後ろに落ちますよね。
「ほうじ茶でいいですよね」
小さく唱え、扉を閉じます。
遠回りしましたが一番の目的は弁当でした。
一番の難所ですよね。
ああどうしましょう。
チキン南蛮、いや。無難なハンバーグ弁当にしましょうか。
あ、鮭おにぎりとカップ麺でもいいですね安上がりです。
悩んでる場合では無いですよね店員さんが待っていますから。先程から私の背中に視線がビンビン感じてます。
「あの人悩みすぎじゃない?」
とか思われてたらどうしましょう。
緊張してトイレ行きたい凄い行きたいです。
しかし商品持ち込めないし、レジを先に済ませましょう。
のり弁とカップそばにしました。
うーん、唐揚げ棒もほしい、いや春巻きにしましょうか。
「お取りしますか?」
「あっえっと大丈夫です!」
今日も唐揚げ串はおあずけです。店員さん忙しくなっちゃいますよね。
「お弁当温めますか?」
「そのままでお願いします」
家は近いのですが、後ろに3人も並んでしまいました。
「ポイントカードはありますか?」
「ありません」
「レジ袋はお使いになりますか?」
「いりません」
「お箸は二膳でよろしいのですか?」
「は、はい」
一人で食べすぎかなと恥ずかしくなり、つい二膳もらってしまいました。ごめんなさい。
「ありがとうございましたー!」
商品持って会計後のトイレは忍びないですね。
あ、まだあの人立ち読みしてて気になります。
せめて私は邪魔にならないよう素早く店を後にしました。
お昼時のコンビニは戦場です。上手く立ち回って店員さんの負担を軽くしてあげなければなりませんね。
毎日どこかしらのコンビニに必ず寄ってます。同じ店には気になって毎日行けません。
いつも迷ってしまい店員さんのブラックリストに載ってそうですよね。
迷惑はかけたくないです。
コンビニではいかに素早く目的を達成するかが私の使命です。
コンビニの作法はホント難しいですね。