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心という情景を描くように

文章を書いている時間は、目には見えない空気の色と形を必死にデッサンしているみたいだ。

言葉にしないと零れ落ちて本当にどこにも見えなくなってしまうかたまりのある空気を、そこに存在し続けてくれるように願いながら影を描き足して色を塗っていく。

自分の中だけにあるその情景を、手に取れる形にして人に運ばれるように祈りを込める。

自分の頼りない角と角を手繰り寄せて、繋ぎ合わせようとする時間。

それまでは見えていなかった空白の中に、歩ける道を見つけ出す試み。

もしもそこに文章が無かったら、灯火のない寄る辺ない道をガタゴトと手だけで探って歩くようなものだ。

だけどここに今文章が存在しているから、私は一つ一つこの手元から光を灯して、あたたかく照らされる先に道を見出し歩いて行ける。

文章は私と世界を結ぶ繋ぎ目を編んでくれるものだ。

これによって、今日も私は存在できた、と実感することができている。

読んでくださって、心からありがとうございます。

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