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オフィス解約もアリ?リモートワークを制度として続けていくために確認しておきたいこと


NHKの調査によると、コロナウイルスの沈静後もリモートワークの継続を含む新しい働き方を実施、検討する企業が多数あることが分かりました。

そのほか各メディアでもコロナを機に働き方を変えていくことを前向きに検討、実行している企業が数多くあることが報道されています。


しかし、早い段階でリモートワークの継続を発表していたGoogle社からは、「完全なリモートワーク」には疑問を持つとの発言もありました。


当該記事においてGoogle社のCEOであるSundar Pichai氏は次のように述べています。

「どのような状況でも、人々が集まるための物理的な空間が絶対に必要だと私は考える。」


Pichai氏の発言の真意はどこにあるのでしょうか。

そのほか、リモートワークを続けていくために確認しておきたいことについてまとめてみました。


労働条件の変更を労働条件通知書や就業規則に反映させる


リモートワークを導入することにより、今までオフィスに限定されていた就業場所が自宅などでも許可されるようになります。

また、勤務時間や通勤費や各種手当の支給方法についても変更があるかもしれません。


そのような場合は、新しい労働条件を労働条件通知書や就業規則で従業員に周知させる必要があります。(*就業規則は、常時使用する従業員が10名を超えている場合には定める義務があります。)

労働基準法第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
労働基準法第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
2 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
4 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
5 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
6 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
7 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
8 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
10 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項


就業規則の改定は、就業規則にテレワーク規程を定める旨を記載して詳細はそちらに載せるかたちでも構いません。


また、リモートワークはオフィス以外で通信技術を用いることが想定されることもあり、セキュリティーの管理・対策は必要不可欠です。

その際にはセキュリティ環境を整えることも勿論ですが、リモートワークで仕事をする従業員に対しネットリテラシーの教育などを行うことも検討する必要があるでしょう。


また、働く姿をオフィスで実際に見ることができなくなるため、労働の実態を把握しにくくなります。

業務量の管理や、業務ログを管理するツールの導入、更に人事制度や評価制度を再考することも選択肢の1つとして挙げられるでしょう。


いずれにせよ、働き方が大きく変わる部分に関しては社内規定等で必ず従業員への周知を行い、営業時間など社外にも影響の出る部分に変更がある場合はHPへの記載や文書の通達などを通じて混乱が生じないようにしましょう。


社会保険の加入要件を満たさなくなるという事態は起きないか


リモートワークを推奨するということはオフィスから人が減る、もしくはいなくなるということです。

例えばここからオフィスは縮小もしくは解約し、浮いた家賃や光熱費をリモートワークのための設備投資や従業員の手当として利用することはできるでしょうか。


まず前提として、会社として存続するために住所を登記することは必要不可欠です。

法律上必要であるという点を除いても、公的機関からの郵送物をどこに送るかという実務的な問題(完全に電子化されるのはしばらく先になりそうですね…)や会社の信用性の確保、詐欺などの犯罪防止という観点からしても、登記の必須項目から住所がなくなることは現状ではあまり考えられないでしょう。


とはいえ無人のオフィスに多大な賃貸料を支払うのも勿体ないので、規模の小さなオフィスに移転するか、シェアオフィスバーチャルオフィスなどを利用するという選択肢もあります。

それすら勿体ないというのであれば、代表取締役の住所を登記簿に載せることも可能です。


例えば労働保険であれば代表取締役住所など人事労務を統括する本社や経営者のいるところを適用事業所にし、従業員住所の直近上位として在宅勤務者の一括管理をしているという登録をすることができます。

(*従業員全員が日常的に業務を行っているという実態がなくとも、登記ができる住所であり会社と従業員との間に雇用関係があるのであれば労働保険に加入することができます。)


住所が変更となる場合は社会保険、労働保険ともに変更届を提出する必要がありますので忘れず行いましょう。


労働環境を従業員自ら整えるということ


リモートワークの普及にあたり注目度があがったものの1つに在宅勤務手当の存在があげられるでしょう。

メルカリをはじめ各社で支給を決定したことを発表しています。


しかし、在宅勤務手当は法律上、リモートワークを導入する場合に必ず支給しなければならないというものではありません。

それでも各社が支給をする理由として下記のようなものが挙げられるでしょう。


①働く環境を整える


仕事はオフィスで行い自宅は休息をする場所としてメリハリをつけていた方も多いのではないでしょうか。

また、インターネット回線が繋がっていないという根本的な問題から、1人暮らしでローテーブルとソファしかない机椅子がないといった場合など、長時間デスクワークをできる環境が自宅にないことも十分考えられます。


リモートワークの中でも特に在宅勤務を制度として続けていくためには、今まで会社が行っていた労働環境の整備を個々人が自宅で行わなければならないということです。


リモートワーク用のPCやIP電話の付与などを会社が行っていればまだしも、生産性を上げるためにより良い労働環境を整えることを考えると、多寡はあれ従業員本人が負担する金額は出てきてしまうということを考慮して在宅勤務手当を支給することはあります。

こちらが支給理由の場合は、月々の手当として支給するというより1度まとまった金額で支給するという対応が考えられるでしょう。



②従業員負担の増加


家族がいるため自宅では仕事ができないといった場合にカフェスペースを利用する際の費用や、オフィスで働いていればかからなかった通信費や水道光熱費、消耗品の費用などが従業員の負担となってしまうことが考えられます。

特にこれから暑い時期になるとリモートワークを導入したことによる空調や飲料についての家計負担が例年より増加することは想像に難くありません。


今まで会社が負担していた分が個人の負担として乗ってくるということで、特にオフィス勤務が中心の従業員とリモートワークが中心の従業員が同じ会社にいる場合は不公平感が生まれないように注意することが必要です。

こちらが支給理由の場合は、勤務状況に応じて月々の手当として支給するという対応が考えられるでしょう。


顔を合わせないことで増えるストレス、減るストレス


リモートワークの大きな特徴は、会社の上司部下同僚あるいは取引先顧客と顔をあわせる機会が減ることです。

オンラインでのコミュニケーションの手段として、特にZOOMが大きな注目を浴びました。


通信環境の悪さを理由とした会話の遅延や、背景や周囲の音をいかに遮断するかという点も含めたセキュリティ上の懸念など技術的な問題は今後解決されるとして、一見オンラインによるコミュニケーションは従来のコミュニケーションの代用として十分に機能しているように思われます。


一方、対面では生じなかったストレスが発生しているとの指摘もあります。


当該記事においては下記のような言及がなされています。

「画面上では、自分が小さな四角形の中に押し込められているため、普段よりも感情を大げさに表してしまうのです」とアイクラー=レヴァイン氏は言う。「私はもうくたくたです」
人間は、何も話していないときにも情報のやりとりを行っている。直接の対話においては、脳は話されている言葉に注意を払うと同時に、非言語的な手がかりからもさまざまな意味を読み取っている。「そうした非言語的な手がかりに強く依存している人にとって、それが見られないというのは大きな消耗につながります」と、フランクリン氏は言う。
ギャラリービューによる消耗はさらに深刻だ。ギャラリービューでは会議の参加者全員が同じ大きさで画面に映し出されるため、脳はいやおうなしに、たくさんの人の表情をいっぺんに解読することになる。その結果、だれからも意味のある内容を読み取れないこともある。


つまり非言語的な情報がない、あるいは同時に多大に押し寄せてくる結果、対面よりもオンラインの方がコミュニケーションにおける消耗は大きいという指摘です。


また、同じ場にいれば起きやすい雑談も、ミーティングの時だけオンラインを繋げるという場合には必要事項の共有が主になるため発生しづらくなります。


仕事中の雑談は不要と感じる方も多いかと思いますが、オフィスにいる時は感じなかった孤独を感じる従業員のケアが必要になるという意味の他に、情報共有のハードルが上がると言い換えることもできるでしょう。

つまり、同じオフィスにいれば必要かどうかに関わらず共有できていた情報が、オンラインという限られた場においては控えられてしまうという傾向があるのです。


本当は自分以外に共有すればより良い結果が生まれるとしても、本人が共有の必要はないと判断すれば情報は完全にクローズドされてしまい周りがそれを察することはできません。

また、同僚の働きぶりを間近に見るなどの外から受ける刺激が減ることでモチベーションの低下を訴える従業員もいるでしょう。


これに対し、リモートワーク中は常にオンラインを繋げておくという選択もありますが、従業員が業務を監視されていると感じストレスを覚えてしまうこともあります。

他にもテレワークハラスメントという新たな問題が生じてしまう可能性があるため、オンラインの繋げ方については慎重に検討をすることが必要です。


同じ空間にいないことで生じるストレスや情報共有の不足を解消するために何が必要かについては、リモートワークを本格的に導入する前に必ず検討しなければならない事項と言えるでしょう。


助成金も活用しながら最適な働き方を探していこう


休業に伴う助成金が着目されがちですが、特別休暇の設備にプラスしてリモートワークの導入に伴う通信機器の導入・更新や、社労士によるコンサルティングなどを実施すると受け取れる助成金もあります。


・働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)

新型コロナウイルス感染症対策の1つとして、病気休暇制度や、お子さまの休校・休園に関する特別休暇制度を整備し、従業員が安心して休める環境を整備することが重要です。
このコースでは、特別休暇制度を新たに整備の上、特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主の皆さまを支援します。

※交付申請期限は2020年7月29日まで


助成金も活用して、新しい時代により適した働き方を選択していきましょう。


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