写真集としてイラストまとめ本を全力で作ってみた
寝る前に読む本が欲しかったので同人誌を作ることにした。
自分のイラストをまとめて写真集という設定で作ろう。
どうやらアプリで本が作れるらしい、これなら手軽でいいな!と軽い気持ちで始めた。
無理でした。
サービスは優秀なんです。ただ3年分のイラストを適当に並べるだけでは満足できない。
選別をして、順番を決めて、しっかり構成を固めて、奥付を作って、ついでに描き下ろしも入れたり…考えたら止まらないね。
その後100時間ほどかけて、下準備から完成、発送まで全力でやってみた過程。
1)下準備をしよう
1.テーマを決める
・自分が読みたいのはどんな本なのか?を書き出す。
これが決まらないとイラストが選べない。
【テーマ】
寝る前に読む本・写真集・物語・思い出・絵本
2.イラストの選別
InDesignに100枚くらいイラストを読み込む。この時点で既に絞り込んでいる。
・テーマに合うもの
・見栄えの良いもの
で、優先1,優先2と言った感じにさらに絞り込んでいきます。
最終的に45枚くらいに厳選しました。
テーマが物語・思い出なので、メインひとりの回想を軸に、登場人物はかなり絞ることにした。
3.大まかな構成を決める
イラストの構成、順番をやんわり決めていきます。
物語っぽい感じにするには、変化が必要
→始まりは暗めで最後は明るく終わろうかな?
→回想から始めて思い出っぽくしようかな?
そんな感じで、Illustrator上で画像をこねくり回してみます。
4.試作
コピー用紙に印刷して小さな本を作りました。これで、実際にめくったときの感覚が掴めます。
開くと情緒が乱れると思ったので、2日くらい寝かせました。すごく良かった。
1回作ってみると、もっとこうしたい!が湧いて次に繋がる。
2)試作を作ってみる
1.手元の本を観察する
本を作るには、本を観察し理解する必要がある。
まずは実際に触れてみます。手元にある画集やイラスト本、パンフレットを調べてみる。
サイズによる印象の違い、右開きや左開き、綴じ方の違い、構成やデザイン、ページをめくったときの感覚、テンポや感情の変化を分析しました。
お気に入りの一冊を深く観察してみる。
こちらを何度も見ていました。イラストの配置が不思議なんです。
・全画面、やや小さめなどイラストの大きさに変化をつけてる。
→顔の大きさを揃えているのかな?
・ページをめくるのが気持ちよくて、テンポがいい。最後まで飽きない。
→構成に特定のリズムがあるのかな?
そんな感じで気づいたところは全部メモします、工夫がたくさん詰まっていました。教本。
2.本格的に構成を決める
・流れが自然になるように
・イラスト毎に設定した時系列から離れないように
・作画や服装がバラバラにならないように
・視線誘導も意識するように
・見栄えよく並ぶように
・いい感じに物語になるように
・テンポ良く良くめくれるように
・最後まで飽きないを意識するように
ほんとうに難しかったので、試しに一冊作ってから考えます。
慣れてないから難しいのは当たり前なんです。最終までいじくりまわしています。
3.奥付を作る
これがないと印刷できないので先に作ります。唯一自由にデザインできる楽しいところ。
BOOTHで奥付用素材を配布してくださっている方がいたので、お借りしました。ありがとうございます!
QRコードも入れたので、読み取れるか印刷テストもしておきます。
デザインが3回くらい変わっています。
4.本の仕様を決める
自分のこだわりを書き出してみます。
ここが曖昧なままだと冊子の注文ができないので、自問自答で整頓しました。
【こだわり】
優しい印象・質感良い・図書館にありそう
テーマとこだわりを元に仕様を決めていきます。
→寝る前に読むならA5?イラスト集ならB5サイズ?
→写真集なら光沢紙?優しい印象ならマット紙?
そんな感じの矛盾はテスト印刷して決めます。
今回は、自分の好きなイラストが潰れたら嫌だなと思ったのでB5サイズに、用紙はマットに決めました。
5.試作
1冊から作れる印刷所様にお願いして、作っていただきました。本当にありがとうございます!
表紙は過去絵を使いました。
開くと情緒が乱れると思ったので隠しながら見えないところに閉まったりなどしました。
本になってる…!いちばんこの日が感動しました。
3)本格的に同人誌を作る
欲しいと言ってくださった方がいたので本気で作りたくなる。
1.試作を元に改良する
・カラーモードの変更
CMYKで入稿したが、思ったよりくすんでいたのでRGBに変更。全部1から配置し直した。
・イラストの変更
好きなイラストでも解像度の低いものは粗が目立つ。泣く泣く変更することにした。
・イラストの描き足しや微調整
迫力のある全画面で見たくなったイラストの背景を描き足したり、調整を加えた
・奥付デザイン変更
世界観に沿ったデザインに変更することにした。
・イラストのサイズと位置を再調整
リズムを意識して、全画面・中画面・小さめ・右寄せ・左寄せなど変化をつけていきます。
・余白色の変更
ほとんどシンプルな白で統一しますが、黒やグラデーションを入れて流れを作ります。
・テキストを入れる
絵の意味をもっと表に出したかったので、絵本のようにテキストを入れてみる。
2.タイトルを決める
めちゃめちゃ悩みました。内容を回収するタイトルも検討しましたが思いつかず。
AIからのアドバイス、自分の気持ちを入れたらどう?とのことで、好きな曲からお借りするタイトルに決めました。
すみません、歌詞からお借りしております。私が彼らに出会ったきっかけの曲なので。
ロゴも作ります。今回は写真集なのでシンプルです。
3.描きおろしマンガを描く
物語性を強めたいので、少しだけ漫画を挟みます。
いくら悩んでも1Pも描けなかったので、漫画の描き方を調べました。
掘り下げが必要なので、テーマや構成をもっと細かくノートに書き出します。
魅力的な演出には、キャラの性格や心理の変化が分かる描写が重要。ページが足りない場合、状況説明を削ったほうがいいとか。
イラストを活かすために、どう辻褄を合わせよう…といった思考では、到底描けるわけがないですね。
その後、心情描写が得意な漫画を読んで演出も分析しました。
・1ページでも違和感のない導入
・過去を振り返る流れになること
・状況説明ができる描写があること
→写真を見る?思い出す?夢を見る?星を見る?水に沈む?
なかなかしっくり来ず、1ページ考えるだけでも苦労していました。
用紙に鉛筆で描いたらすんなり思いついてしまった。
マンガは紙と鉛筆で描くべき、理解しました。
4.描きおろしイラストと表紙を描く
人物バーンに小さなタイトル、写真集の表紙デザインがとても好きです。
とにかくシンプルです。キャラの顔は大きいほどいいです。
「すべてはきっと繋がってる」歌詞にあるように表紙と裏表紙の空間を繋げて描きます。
このあたりはもうめちゃめちゃ疲れていて、一人描き忘れて完成!って言ってました。入稿前に気づいてよかったです。
入稿前にフォントの詰めの甘さは気づいたのに、イヤーカフは描き忘れました。垢消そうかと思いました。
5.細かい本の仕様を決める
印刷所を決めます。
どれにしようかな~の時間が楽しいのもあり、決めるまでにかなり悩みました。
RGB入稿が比較的綺麗とのことで、おたクラブ様にお願いしました。
表紙はクリスタで作成したPSDを、本文はIllustratorで作成したPDFで入稿します。
【Illustratorの設定】
解像度300 カラーモードs-RGB
B5サイズの各アートボードに3mmの打ち落としを設定
【出力設定】
Adobe PDFプリセット「PDF/X-4 2008(日本)」
→圧縮「ダウンサンプルしない」
→トンボと裁ち落とし「ドキュメントの裁ち落とし設定を使用」
用紙を決めていきます。
用紙サンプルに触れて、種類による発色の違い、質感による印象の違い、厚みの違いを観察しました。
表紙をマットPP、中身をコート用紙(微光沢)に変更しました。
マットPPはあの手触りの良い肌感が大好きです。加工に合う無難な表紙を選択します。
本文用紙のおすすめは上質紙と書いてあったけど、ライムカラーを綺麗に印刷して欲しかったので、発色の良いコート紙に。
オプションをつけてみます。
遊び紙に興味はなかったのですが、『新・星物語』の名前を見た瞬間、カートに入れました。(歌詞に星物語が入っている)古い感じも夜空感も非常に気に入ってます。
あとは念入りに確認して入稿、本当に怖かった……。
6.完成
試作よりPP加工が薄くてふにゃっとしています。めくりやすいけれど、表紙が傷つかないかひやひやしてしまう。でも障り心地は良い…ずっしりしています。50Pの重み 推しの重み…インクの匂いするね…
中身の発色も綺麗で、これにしてよかった!と思いました。
背景書き足し+色調整したもの。全然違う
背景書き足し+賑やかに追加したもの。
他ページもやりたかったけれど、メインイラストが小さくなるのが嫌でできなかった…。
ついでにポストカードも作ってもらいました。
二人並ぶよう2枚セットにしよう!どうせ作るなら両面印刷にしよう!絵の邪魔にならない加工を追加しよう!
といった具合にどんどん欲が出ました。光沢が上品なパール系の加工が好きです。
初めてのイラスト本。構成とか配置とか、めくったときの感情とか物語性とか、こんなに難しいのかって思ったけれど。たくさん悩んで考えたこと含めて、ひとつの物語が完結したような…続くけれどね。
そう、続きます。まだ終わらない!!通販ならお品書き作ってBOOTHにおいて梱包して郵送までが同人誌!!!!
4)本の紹介をしてみよう
1.お品書きっぽいのを作る
夏コミが近かったのでいろんなお品書きを見てて心躍らせていました。
これは、気づいたらできていた。
これをBOOTHにおくことで『写真集が頒布されている世界線に生きている』事実に自己肯定が爆上がりします。存在するだけで幸せになるんです。
2.エアコミケ
欲しいと言ってくださる方がいらっしゃいました。
本当にありがとうございます。フルカラー本はハードル高いです、それなのに…?そんな方々に、本を簡易梱包で送ることができるのか…?
どうしても、大切な本とその中身への、ぜんぶの想いを考えたら、ダメだ…!!すみません、今少量通販でしかできないこと、したいです!!!!!お付き合いください!!!!!私そういうやつです!!!!!よろしくおねがいします!!!!!!
5)おしゃれに梱包したい
1.デザインを考える
本気で梱包を考えます。
・ダンボール板で挟むのは見栄えが好きじゃない
・ラップで止めるのもちょっと角が怖い
・やや厚いので封筒に入りづらい
・過剰梱包になりすぎないようにしたい
・なるべく可愛くしたい
……?……??
本当は紐で縛って小堤みたいにしたかったのですが、万が一にも本に支障が出たら死ぬのでリボンにしました。
2.専用封筒を作る
Illustratorでロゴっぽいものを描きました。YとAが入り混じっています。これを封筒に印刷しました、めちゃめちゃカッコイイです。
3.シーリングスタンプを作る
思い付きで注文したスタンプが届きました。
Aは古代アトランティス、YはY学園をイメージしています。ワックスもアンティーク&ゴールドで、古と現代の差を出していこうと思います。
古代のAから現代のYまで「ABCDEFG…じゅんぐりにほら僕らが紡いだ」という歌詞の通りというわけです。これを封筒に貼ります。
A側に古代人を、Y側に現代人が前に来るよう中身を入れます。
4.おまけステッカーを作る
勢いあまって作りました。ステッカーです。
光沢シール用紙に印刷し、コンパスカッターでカットして、パッケージングしました。これは本当のおまけです。無くなり次第終了です。
『推しグッズが新たに複数誕生した』事実で幸せになるための自己満足です。私はセリアの紙製コースターに貼りました。
5.サンクスカードを作る
1枚ずつ穴をあけて、手描きしています。
これらを梱包しているとき、好きな物を送り届けるときってこんな気持ちなんだって思いました。
幸せだと思いました。じぶんひとりじゃ味わえない幸せでした。機会を、ありがとうございます…。
全部、開けやすいよう簡易的に止めてます わざとです。全部、捨てやすいようにもしてあります。本とポスカ以外は私のエゴなので、どうか気軽に封筒に挟んで捨ててほしいな。もちろんもらってくれたら嬉しいのは間違いないのですが。
6)感想
寝る前に読む本を作る話だったのに、こんなことになっちゃった。
存在するだけで幸せになる、自己肯定感が上がる。君がいればもっと強くなれる。
次何作ろうかな…というワクワクが止まらなくて困っています。本を作る楽しみをひとつ理解しました。
今晩は抱いて寝ることにします。