ブリオッシュと失恋
私はずっと、あるブリオッシュの味を探している。
初めてブリオッシュという存在を知ったのは、私が住んでいる場所からかなり離れたところにあるパン屋さん。
あんバターを買ったら、そのパンがとてつもなく美味しくて、そのパンとしてブリオッシュが使われていることを知った。
初めて食べたブリオッシュは、バターのたっぷりとした甘さと、塩味の割合が完璧で、大好きな味だった。
それから、私は行く先々のパン屋さんでブリオッシュを探すようになった。
しかし、何軒回っても、ブリオッシュに出会えても、「あの味」には出会えない。
ブリオッシュと言っても、店によってそれぞれ個性があることを感じていた。
そして今日、、、!「あの味」にとっても近いブリオッシュを発見したのだ。
一口目にくる甘さ、そして噛むと広がる塩気。
私が探していたのはこれ、、、、!!!!だったっけ、、、、????
確かにこの味を求めていた気がするし、「あの味」に最も近いのには間違いない。
だけど、あんなにブリオッシュが食べたかった割には、出会えた時の感激度が少ない。
これってもしかして、初めて食べた時の衝撃と、なかなか出会えない歯痒さが、私を引き留めていたんじゃないか。
ブリオッシュ自体好きだけど、実はそこまでではないんじゃないか。
急にそんな気分になってきた。
あ、これ、失恋に似てる。
失恋って、恋したあの時の甘さや、涙した時のしょっぱい思い出がずっと心に引っかかる。
失恋がなかなか忘れられないのは、その人が特別なんじゃなくて、実は恋したあの人が手に入らない歯痒さが原因なんじゃないか。
そんな風に思えてきた。
もしかしたら、このパン屋さんには私が求める「あの味」のブリオッシュがあるかもしれない。
もしかしたら、ここに「あの人」がいるかもしれない。
私のブリオッシュ探しと失恋は似ている。
そしてこれからも私は理想のブリオッシュを探し求める。
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