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10年乗ったクロスバイクをカスタムする

「マウンテンバイクに興味が出てきた」とXで投稿して、伊達市の栗原さんといっしょに札幌のサムズバイクに行ったのが2023年11月。すぐに冬になってしまい、仕事も私生活もバタバタして、いつの間にか夏が終わろうとしている。

しかし、その間ずっと考えてみると、新車を買う気にはならなかった。そもそも自分は2014年の秋に買ったGIANT ESCAPE R3に乗っていて、付き合いは今年で10年になる。俺はこの入門クロスバイクをメンテナンスし続け、修理代は合計すると同モデルの新車が買える以上の額になっている。この機会に買いかえたほうが、賢明な選択だっただろう。しかし今さら、他の何かに乗りたい気持ちがわかなかったのだ。

2023年秋・壮瞥町

思えば、こいつには恩がある。幾千の遅刻から俺を守り、数多の夜、終電後の世界に連れ出してくれた。憎悪と広告でいっぱいの東京の電車をパスできたのも自転車のおかげだ。

会社をサボって練馬から狭山湖に行った日、自営業なのに仕事がなくて豊平川に寝転がりに行った日、孤独に耐えきれず友達の家に行った日。そばにいたのは、いつもこのクロスバイクだった。

2015年春・埼玉県 狭山湖

しかし事実、経年劣化と金属疲労でパーツは悲鳴を上げている。チェーンは伸び、プラスチックは割れ、スポークは折れてしまった。そこで、メインフレームと生き残っている部品を活かして、メンテナンスと言うよりは大幅なカスタムを施すことにした。ありがたいことに自転車乗りの先輩がメカニックを紹介してくれたのだが、実際に見積もりをしてみるとその金額たるや、同モデルの新車が買えるほどである。それでも、文字通り俺をここまで連れてきてくれたこの自転車に、敬意を払いたかった。この自転車を置いてどこかにいくなど考えられなかったのだ。

俺もジャズマスターも、ただ死を待つようにはしたくない。抗う、毎日死を避ける、右、左、左。なんとフレット打ち直しとピックアップ配線その他で56,000円である。洗濯機が買えてしまう。それでも、降りかかる死を避け続けた自分を、一番近くで見ていてくれたこのギターが朽ちていくのだけは嫌だった。

①死、②ギター修理、③歯医者 | 15分で考える音楽以前のこと(23)
2023年夏・札幌

道具をメンテナンスし続けること、長く使い続けること。使い捨ての価値観を遠ざけることができた喜びも大きいし、どんな乗り心地になっているかを想像して、ワクワクが止まらない。自転車が戻ってきたら、色んなところへ行こう。いつかフレームが割れるか、俺が死んでしまうまで。

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