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残念だったなあ、が嬉しい。

「ちょっと残念だったなあ」

と言ってくれた人がいる。誰に言われるかで全然受け取り方が変わることばだけれど、僕はその人にそう言われて嬉しかった。

熊の革製品を販売しはじめて、大きくいえば丸2年が経つ。最初は自分で作った小さなチャームだけだったけれど、活動を続けるうちに協力してくれる職人さんが出来て、商品が増えて、買ってくれる人も増えた。どれもハイクオリティなので自信をもっておすすめすることができるし、ずっと頭を悩ませてきた「値段」に関しても、多少の揺れはあるのだけど基本の考え方を作れたので、あまり悩まずできている。今後も続けていけるかどうかは、市場のみなさんがどう判断するか「神の見えざる手」を観察するしかない。

記念すべき1作目の熊革製品

そして今年(2024)の6月から「ITAZ LEATHER」という熊革製品ブランドを立ち上げて、約半年が経つ。「神の見えざる手」は今のところ僕に施しを与えてくれていると思う。もちろんめちゃくちゃ裕福になったわけではない。お金的な意味ではまだまだ困りまくっているのだけど、熊革というものの持つ価値が僕にとってだけでなく、たくさんの人にとって大きいこと、そしてそれに対して自分のつけている値段が大きくは間違っていなさそうなこと(もちろんまだ全然回ってないので間違ってる可能性もあるんだけど)、徐々にそういうことが分かってきた。だからこそまずは自分と熊の革のことを信じて活動しよう、そんな気持ちでいる。

ただ、そう「残念だったなあ」なのである。ある方にそう言われて、いやあ、そうだよなあと思わざるをえなかった。僕はちょっとサボっている。

この半年間、僕はほとんど自分でものを製作していない。ん、それは言い過ぎか。狩猟者の方々に差し上げる熊革狩猟者手帳ケースなるものは作っていたけれど、そこに安住してそれ以上のものを製作していなかった。だから、商品のラインナップに僕が作ったものはほとんどなくて、職人さんに製作していただいたものがほとんどという形になっている。職人さんが作るものを売るという形が、今の事業にとっては最適だと思っているのでそれはそれでいいのだけど、「僕自身が作る」というところに価値を感じてくれている人が一定数いることを、僕はちょっとだけ無視していた。無視と言うとことばが強いかもしれない。ちょっと流していた。作る暇がないんですよ、という気持ちが半分、何を作ればいいのかわからないのが半分。ただ今となっては、僕の作るものなんて職人さんの作ったものに比べたら全然遠く及ばないから、あんまり作りたくない、なんて気持ちも混じってきているような気がする。ま、つまりサボっている。

狩猟者手帳ケース

「残念だったなあ」というのは、そんな僕の商品ラインナップを見て、そこに「僕がいない」ことを感じたある方が言ってくれたことばだ。この半年間色んな人にいろんなことをアドバイス的に言われてきたけど、正直自分が一番考えていると思っていて、あまり気にしてこなかった。というか、その言われたことも考慮した上で今この選択をしてるんですよ、と思っていた。でも、このことばは響いたなあ。売れるとか売れないとかはあるかもしれないけどさ、「お前がいないじゃん」って言われてるような気がした。ずっと自分の活動を見てくれていた方だったからこそ、めっちゃ嬉しかった。僕もそう思う。この商品の中に俺はいない。

このまま売るだけの人として、伝えるだけの人として、僕はやっていくのだろうか?いや、そんなことはないと自分が一番思っている。誰も思い浮かばないようなこと、というと大袈裟だけれど、自分が狩猟をやっていて、そこから製品を製作して、さらに販売するというところまでやっているからこそのインプットがあり、生み出せるものがあると思う。ずっと考え続けている。すでに作りたいものもある。ただ、「売れないだろうなあ」というところで手が止まっていた。でもそれじゃだめになると思う。売れなくてもやるんだよ、と手を進めないといけない。

その人に言われてから、ずっとやろうと思って手が進んでいなかったことをやった。作ったものを見て、やっぱり売れなさそうだなあと思ったけれど、それでもやるんだと今は思っている。作ってみて、自分のつくったものがお店にある意味を感じたからだ。
そこまできてようやく、自分の作ったものが売れる、そして食えているというのは一体どういうことなのだろうか?と考えることになった。

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