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ISO9001の本質的理解へのガイド第5回


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ISO9001の箇条構成の実業務~How toを考える~

 
ISO9001の内部監査およびQMSのCPDコースのセミナー、QMS/EMS/OHSMSの審査員、ISO認証取得のコンサルタントとしている舩石篤史と申します。今回、私がこれまでに行った各種セミナーおよび審査経験、ならびに45歳までに業務で得られた知見からたどり着いたISO9001の本質的な理解についてのお伝えさせていただきたく、このガイドを作成し、公開することにいたしました。

 本連載は個人の方に限り、無料でご閲覧いただけます。ただし、法人における教材等への引用・活用は「メンバーシップ:法人用」をご購入されている法人に限り許可します。それ以外の無断引用・使用は禁止します。


 これまでの4回目までの講義において、ISO 9001の本質、本来の目的について経営的な視点から解説をしました。ただ、ここまで聞いた後で思うことは次のことではないでしょうか。

「具体的にどうした良いのか?」

 これは私がセミナーを行った後で良く聞く言葉です。つまり、概念や理念を理解し、要求事項に目的があることを説明したうえで、具体的にどのようにしていくのかです。これは、先んじて書いた通り、ISO 9001には「What」は書いてありますが「How to」は一切書かれていません。これは汎用性を持たせるために致し方が無いところです。

 しかし、皆さんはこの「How to」は実際の業務の中で作り上げ、適用しているはずです。そうでなければ業務ができていないからです。ただし、それが機能しているかどうか、もしくは改善をしていくためにはどのように考えればいいのか、と悩まれることでしょう。

 最終的には改善の方向性は組織が決めなければなりませんが、どのように改善をするのかを一から作り上げるよりも、先人の知恵を拝借して改善を行うこともできると思います。


その一つの方法が各箇条に対してインプットとなる情報を当てはめ、一貫したマネジメントシステムの参考にしていく、という方法を提案します。

 第4回で示したISO 9001のフロー図が下記のようにあります。これの各箇条に対して、必要な情報源やビジネス書を当てはめていきます。


 といってもどのように当てはめていくのか、となります。なので、私自身の活動、これは投資、審査員、セミナー講師としての今までに得られたインプットとなる情報ならびにビジネス書を当てはめてるとこの様になりました。他にも色々とありますが、これは一例です。

 上記は各箇条となりますが、私の基礎となるものとしてはそれまでの趣味や経験が大本にあります。

 ここまでは私自身について、ISO 9001の箇条ごとに参考になったビジネス書や参考としている情報源、そしてその基礎となった趣味や経験を記載しました。これと同じことは規模が違っても、国家、企業でも可能なはずです。無論、私以外の人にも当てはめて活用することはできるはずです。

 なお、歴史のある組織(国家、企業)においては各箇条に合致する要領書や規定があると思います。それを箇条ごとに整理して並べてみることによって、一貫した物となっているのかどうかを見直すのも良いと思います。そして、世の中に合わなくなった箇所があれば、必要な程度の見直しや改善を行い、時代の変化に適合させていくことが必要になるでしょう。例えば箇条4では世界の変化、箇条5ではトップマネジメントの交代等の変化があったときは、それ以降の箇条における要領書や規定で良いかどうかの見直しや改善のきっかけになると考えます。

 さて、ここまではいまある組織活動における参考書や過去の経験からの特性を整理したものとなります。今までであればコレで良かったのですが、この原稿を書いている時は革命の真っ只中です。そう、生成AIの発展による業務や生活様式が一変する過渡期に差し掛かっています。審査員、セミナー講師、投資家としてはこの流れを無視することはできません。よって、ここからは私の想像の域となり、確実なものとは言えませんが、自分なりの生成AIによる影響がどのようになっていくのかについてお伝えし、今後のマネジメントシステムへの参考としていただければと思います。

 AIの台頭は10年ほど前から始まっています。それは将棋AIがプロ棋士に勝ったことです。当初は過去のプロ棋士の棋譜を参考にし、考えられる読み筋を手当たり次第に読んでいたのですが、そのうちに、将棋AIは単なるプロ棋士の棋譜の模倣にとどまらず、独自の学習アルゴリズムを発展させるようになりました。これにより、将棋AIは人間の棋譜に頼らずとも、自律的に学習し、常に最も合理的な手を選択できるようになりました。

 将棋AIの進化は、従来の定跡や常識にとらわれない「新しい発想」をもたらし、プロ棋士たちに大きな衝撃を与えました。特に、将棋AIが人間には到底見えないような手や、常識外れの指し手を選択することで、将棋の戦略や理論に新たな視点が加わり、将棋界全体の発展に寄与しています。また、将棋AIの存在によってプロ棋士は従来の研究方法を大きく変えることになりました。将棋AIと共に研究を行うことで、より正確な読みを持った戦略を立てたり、対局前に新しい戦術を準備することが一般的になり、将棋AIはプロ棋士にとっても欠かせないツールとなっています。

 このように、将棋AIの進化は単に技術的な勝利にとどまらず、プロ棋士の研究スタイルや将棋のあり方そのものを変革してきました。現在では、人間と将棋AIが協力し、より高度な将棋の探求が進められています。

 そして10年の時が経過し、生成AIであるChatGPTがリリースされました。原稿執筆時点のChatGPT4oになって極めて高いスキルを有しており、今後も発展することが確実です。この技術は学術や研究分野にも既に広く使われており、例としては製薬会社における生成AIの導入によって下記の効果が得られています。

1.膨大なデータの高速解析と学習
2.仮想実験の効率化
3.分子設計の自動化
4.パーソナライズド医療の加速
5.臨床試験の効率化
6.反復可能なプロセスの自動化:

 AIは一度学習したプロセスを反復的に自動で実行できるため、ヒトが行う手動作業に比べて圧倒的に短時間で多くの候補をスクリーニングでき、これにより開発スピードが劇的に加速しています。

 他分野他業種でも同様のことが発生します。これにより、企業等によって必要とされる人は下記のように変わると考えています。

 クリエイターは企画等の想像をする役割を担います。
 コミュニケイターは営業担当です。顧客と直接話しをします。
 スペシャリストは現場における特定技能や免許を持つ人々です。
 ワーカーは上記の補助を行う人

 生成AIに多くのヒトの仕事が代替されますが、現場での一定の技術を要するスペシャリストの仕事は生成AIでは代替不可です。クリエイターとコミュニケイターは一部のヒトが生成AIを使って仕事をするようになるでしょう。

 ワーカーは生成AIによる置換が進みます。特にホワイトカラーにおけるワーカーの仕事は顕著でしょう。また、ワーカーは多岐に渡ります。プログラマーや芸能人も含まれます。例えば、伊藤園「お〜いお茶」カテキン緑茶のCMです。このCMに登場している女性は生成AIで作成されています。今までは芸能人に依頼をしていましたが、生成AIのキャラクターを使うことで、費用面と不祥事が起きないというメリットを企業は享受することができることになりました。

 このように多くの仕事においてヒトの仕事を生成AIが代替することになります。そして、それをしなければ生き残ることはできません。なぜならば生産性が段違いに異なり、それは利益に直結するからです。つまり、IT革命による仕事の速度向上の比ではない速度向上となります。しかし、専門性の高い人が生成AIを使えるようになることで、業務量は少なくなります。

 問題は、スペシャリストです。生成AIで管理するためにはカメラやセンサーが必須ですが、訓練された職人の五感は現段階のカメラやセンサーを凌駕しています。日本では少子高齢化とともにスペシャリストが激減しています。これは、経営にとっても著しく大きな問題であり、審査員にとっても重要視しなければならない点であると考えています。

 また、生成AIによって自動化される業務においては、そのプロセスや手順および判断基準をヒトが決める必要があります。そのインプットがあって初めて生成AIはワーカーの業務ができることになります。つまり、クリエイターとは科学者だけではなく、企画・設計開発や工程設計ができる人を指します。また、工程設計をする人は品質工程図等を作っていると思いますが、これらの情報を生成AIにインプットして学習させ、現場のワーカーが質問をすれば生成AIが答える様になっていくことが考えられます。これにより、極めて生産性が上がることが期待できます。

 上記のように経営そのものに対する影響が生成AIによって著しく変わることが確実視されており、それについていけなければ競争についていけないという、サバイバル(完全実力主義)の時代に入ると考えられます。この変化に対応する改善を行わなければなりませんが、審査員および投資家としてはこの変化に対する改善について興味を持って活動を行っています。

 ここまでが、ISO9001の本質的な理解のガイドです。品質マネジメントの枠を超え、経営との一体化を行い、ありとあらゆるところに利用できるフレームワークとしての使うことができることを説明しました。
 
 今後の活動としては、以下を考えています。全てはISOのフレームワークに従って論じていきます。それにより、これまでバラバラであった学問に一貫性をもたせ、実務で使えることに挑戦します。なお、次回以降は有料記事として配信する予定です。

 ①組織が生成AIに与える影響と審査・監査
 ②品質・環境・労働安全衛生を統合した内部監査
 ③子どもや部下への教育
 ④次期改定のインプットに対する現状での活用
 ⑤資産形成と投資術
 ⑥魅力的品質の作り方
 ⑦個への適用
 ⑧国への適用
 ⑨顧客満足に対する心理学の応用
 ⑩管理職の力量
 ⑪行動経済学による組織内個人の行動

以上


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