100円のゴディバより無料のアルフォートなのだ、の話
僕は無料!という言葉には強い、という自負を持って生きてきた。
Softbankで契約をしている姉がサーティワンの無料アイスに1時間かけて並んでいるのを軽蔑していたし、街頭で配っているティッシュを受け取ったことはない。
しかしそんな僕でも、インターネットに落ちている無料ポルノ動画を視聴したことはある。
が、その話は一旦置いておこう。
今日はこの無料!という言葉が持つとんでもない魔力について、行動経済学の観点からお話したい。
前回の相対性の時もそうだったが、
自分の意思で選んでいるつもりが実は選ばされている
ということが往々にしてある。というかその状況を容易に作り出せるのが行動経済学だ。
前回に引き続き、「予想どおりに不合理」という本から面白い部分を抜き出して、書評をするわけでもなく自分の思うことをたくさん書いていく。
(これどうやって短縮URLにするのかを忘れました。みづらくてすいません。)
早速行こう。
ある実験を、現代日本に分かりやすく言い換えて説明する。
大学の廊下で、2種類のチョコを同時に売る場面を想像してほしい。
1月中旬にこんなチョコの話をして、お前バレンタイン意識してるのか?プークスクスという声が聞こえてこなくもないが、
バリバリに意識している。みなさん、チョコください。なんかチョコケーキとか食べたいな。コロナ始まってから誰かと集まることも減ったからホールケーキとか全然食べてないな。ケーキオフ会したい。
時を戻そう。
1つ目はゴディバの1個400円する高めのチョコ。
2つ目はアルフォート、1個10円くらいのもの。
二つを同時に選べないように、「おひとりさまおひとつどうぞ!」と言って売り出す。
まずはゴディバを50円、アルフォートを5円で売る。
この時、通る大学生の大半はゴディバを買った。
そりゃそうである。普段高くてなかなか買わない(買えない)ゴディバのチョコがたったの50円で手に入るとなれば、お得感を感じて選ぶ人が多いだろう。
この時、100人中72人がゴディバを選び、28人がアルフォートを選んだ。
では次に本題だ。
ゴディバを45円、アルフォートを無料!にする。
先ほどとの値段の違いは両方とも同じだ。
ゴディバを45円で食べられることなどなかなかない。では、ゴディバを選ぶ人が増えたのだろうか?
実際はその逆であった。無料!とかかれたアルフォートを選んだ人が69%、ゴディバは31%まで落ちた。一体何が起きたのだろうか。
この一番の理由としては、人間は本能的に損失を避けようとする傾向がある、という点が挙げられる。よく言われていることだが、人間は利益よりも損失に過大に反応するように作られている。
一万円をもらうのと五千円を失うのとでは、
衝撃は後者のほうが大きい。
ポイントカードを持ってくれば10円分のポイントが付きますよ、と言われても、面倒臭くてカードは持っていかないが、
レジ袋有料で5円かかります、と言われた途端にポイントカードの何倍も重いエコバッグを持ち歩くようになる。
それが人間という生き物だ。
それがゆえに、45円のゴディバと無料のアルフォートを見た時に
「うお!アルフォートを選べば損をすることは絶対にない!」と反射的に考えてしまい、アルフォートを選ぶのだ。
人間にはこういう傾向がある、ということを知っておくだけでも
明日からの人生における選択を少しでも主体的に行っていける。
世の中は頭のいい人が自分たちに都合の良いように作っているもので溢れている。それらに振り回されないためには、こうしてちまちまと奴らの手の内を勉強していくしかないのだ。
薬の知識を得るためには毒の勉強もしなければならないのである。
・・・微妙に例えがズレている気がするけど次に行こう。
人が無料!に異常に飛びつくことを証明している実験は他にもある。
皆様に即答していただきたい。
無料!で1,000円分のアマゾンギフト券を受け取るのと、
700円払って2,000円分のアマゾンギフト券を受け取るの、
どっちを選ぶだろうか?
もちろん冷静に考えれば、後者のほうがトータルで1,300円儲かるわけだから、合理的に考えれば後者を選ぶべきだろう。
しかしこの場合にも、大半が無料で1,000円分を受け取る方を選ぶ。
疑い深い皆様のために、実験ではもう1パターン行われている。
100円払って1,100円分を受け取るのと、
700円払って2,000円分を受け取るのならどちらが良いか?と聞いた実験だ。
要は、無料の選択肢を取り除いたのだ。
もうお分かりかと思うが、この場合は後者を選ぶ人が大半だった。
これほどまでに、無料という言葉の魔力はすさまじい。
ここからは私見を述べていくが、まず、無料のものを楽しんだり便益を享受することは決して悪いことではないと思う。
いつもどおりの靴下を買っただけでもう一足同じものがついてくるならありがたく受け取るべきだし、お腹が減っているなら大盛り無料のお店を選んでたらふく食べるのも良いだろう。
問題となるのは、無料!の誘惑によって、本来するつもりのなかった行動をさせられている場合だ。
靴下を買うにしても、本当は赤いワンポイントの入ったオシャレな靴下を雑誌で見て、買いに来ていたとしよう。
にもかかわらず、「黒い靴下、2足購入で1足ついてくる!」の貼り紙があり、店を出ることには黒い靴下3足を手にしている、なんてことにはならないほうが良いだろう。
あるいは今日は大戸屋で健康志向のご飯を食べようと思っていたのに、駅からすぐのラーメン屋に「本日大盛り無料!」という立て看板が出ているのを見て、
(^q^)
こんな顔をしてラーメン屋に突撃して行くのはあまりよろしくないだろう。
それは自分で決断しているのでなく、決断させられているだけなのだ。
ここまではあくまでも行動経済学の中での話だが、もう少し俯瞰して見てみると、この手の話は一種の洗脳にも近いものがあると言えるかもしれない。
先程言ったとおり、人間の頭はとにかく損失を嫌うようにできている。
損をする可能性がない、と思っただけでブワッと幸せを感じるようにできているのだ。
これは否定的誤謬という話につながっていく。
と書いて一応文献をあたるべくちょっと調べたのだが、全然出てこないのでこんな言葉はないのかもしれない。あれ。
言葉自体は僕の勝手な名前かもしれないけど、意味のある話をするので少しだけお付き合い頂きたい。
僕たちがまだ動物を狩って食べて、夜は焚き火をしながら寝ていたころを想像してほしい。
家族で火を囲んでいると、向こうの茂みの奥からガサッと音がする。
この時、2パターンの人間がいた。
お?獲物か?ちょっと見てくるわ というAさん。
獲物かもだけど、ライオンかもしれない…隠れよう。というBさん。
この二人のどっちが生き残る確率が高いか、という話である。
当然Bだろう。食料に困っていないのなら、火のそばにずっといてリスクを犯さないほうが生存には繋がる。
この時、二人には違った「誤謬」の可能性がある。誤謬というのは簡単にいうと間違いのこと。
Aさんは「獲物になるような小動物がいるかと思ったら、ライオンがいた」という誤謬の可能性。
Bさんは「恐ろしい動物がいると思ったら、実は獲物にできるような小動物だった」という誤謬。
この時、Aさんのようにポジティブに考えて間違っていました、というパターンの誤謬を肯定的誤謬といい、
Bさんのようにネガティブに考えて間違っていました、というパターンの誤謬を否定的誤謬という。(少なくとも僕はそう呼ぶ)
否定的誤謬のほう、すなわち「確かに餌はあるかもしれないけど、死ぬ可能性があがるなら行かない。損(死ぬこと)は絶対にしたくない。」と考えるほうが明らかに生存には有利だ。
こうしてAさんは死にBさんが生き残り、Bさんが残した子供の子供の子供の子供の・・・・子供が現代を生きる僕たちなのだ。
だから僕たちは当然、この損失を回避する気質を持っている。
ほんで話は戻り、この「損失を回避したい」という気持ちを最大限尊重してあげるのが
「無料ですよ!(はぁと)」という甘い誘惑なのだ。
尊重してあげるといえば聞こえは良いが、利用しているだけであり、それは洗脳であり操りなのだけど。
まとめると、
自分の中には損失をめちゃくちゃ回避したいと考えてしまう本能がある。
ということを頭に入れておくだけでも誤った選択をする可能性は低くなる。
ぜひみなさまにも頭に留めておいて頂きたい。
あとは余談です。
この損失回避の話僕好きなんですけど、本当に現代の人類に適合していない特性ですよね。
今の時代、どんなに損失を被ろうと思ったって最低限のセーフティネットはバッチリ構築されているわけで、何をやらかしても死ぬことはないんですよね。
なんだけど、古来からの習慣のまま、損失を異常に怖がるようにプログラムされているのが我々なんですよね。
クビになったら生きていけないんじゃないか、とか。
ナンパしたら死ぬほど罵声を浴びてもう生きていけなくなるくらい凹むんじゃないかとか。
独立して上手く行かなかったら、今の生活と比べたらとんでもなくヒドイ暮らしに落ちてしまうんじゃないか・・・。いやだ・・・。
的な。
何を隠そう僕もそうなんですけども。笑
まだ起きてもいないのに最悪の状況を想定して仮想体験して、
一人で勝手に凹んでいくことがめちゃあるんですよね。
でもそれだけだと現状維持人間で終わってしまうし、
現状維持って今の変化の激しい時代では後退でしかないので。
僕は変わりつつ前進して行きたいと思い、毎日ひいこら言いながら本読んで店作りして筋トレしている次第です。
さて皆様、今日は
無料!のポルノ動画を見に行かれますでしょうか。笑
お金払って買うと失敗するかもだけど、無料ならその損失リスクを回避できるから良いよね、という説を唱えることもできますが、
紳士として、そこは業界の発展に寄与していきましょう。
無料!の誘惑に打ち勝ち、お金を落とすことですよねやっぱり。
そのほうが身が入るってもんです。
何に身が入るんだよ、という話ですが。
をはり。