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【新譜案内】ゲーベル指揮「ベートーヴェンの世界」第3弾

ドイツの指揮者ラインハルト・ゲーベルが取り組んでいる「ベートーヴェンの世界」というシリーズの第3弾です。
これまでベートーヴェンと同時代の作曲家の作品を取り上げており、ヴラニツキー、ライヒャ、ヴォジーシェク、ロンベルグ、クレメント、エーベルル、ドュセックといったマニアックな作曲家が並び私にとっては垂涎のシリーズですが、今回はなじみの深いサリエリ、フンメル、ヴォジーシェクという師弟3世代の作品です。

サリエリは言わずと知れたモーツァルトと関係の深いライヴァル? 宮廷音楽家仲間?であり、当時のハイドンと並び最高に人気のあった作曲家。教師としてはベートーヴェン、シューベルトをはじめ多くの音楽家を育てました。フンメルもその一人です。

フンメルは幼少期から音楽の才能を認められてウイーンに移り住んでからモーツァルトに弟子入りし、住み込みでモーツァルト家と一緒に生活を共にするほどで、モーツァルトの後押しもあって2年ほどでピアニストとしてヨーロッパ演奏旅行にでます。ウイーンに戻ってから和声法や管弦楽法、声楽をサリエリに師事していました。その後の活躍については拙筆のサイトにてご確認いただければと思います。

ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクはモーツァルトが亡くなる年の1791年5月11日、現在のチェコに生まれました。ベートーヴェンに注目されるほどの才能を開花させ始めていたのに、1825年11月19日、34歳という若さで結核によって亡くなった人物です。
もともとは教師を目指していましたが、20歳になろうかという頃から本格的に音楽家を目指そうとして1810年からトマーシェク、1813年にはウイーンに移ってフンメルに師事します。フンメルの紹介でベートーヴェンとも知り合い、これからが期待される才能ある作曲家でしたが、早逝はとても残念です。

作品としては、ピアノ曲として狂詩曲、即興曲、変奏曲、ピアノソナタがあり、そのほかに室内楽曲、歌曲、交響曲ニ長調などがある。また、自筆の教会音楽作品が残っている。作風はベートーヴェンの影響が強く感じられます。今回の交響曲にはツェルニーやメンデルスゾーンの交響曲に似た雰囲気や、同じくベートーヴェンの影響が大きいリースの交響曲と同じ匂いがする楽曲です。


フンメルの作品は今やいくつもの演奏で聞くことができるヴァイオリンとピアノと管弦楽のための二重協奏曲です。
この協奏曲はモーツァルトの作風に似た作品が多いフンメルの中でも最もモーツァルトの香りがする曲です。
聞いているとモーツァルトのピアノ協奏曲K.453やK.415、K.451のフレーズのコダマが聞こえてきます。後期のフンメルの作品のような装飾にとんだ華麗なピアノテクニックというよりも、自然な旋律の流れと抑制されたハーモニーでしっかりと構成されています。

サリエリの管弦楽のための変奏曲は、これは楽器学理、管弦楽法、和声法のお手本ともいうべき楽曲だと思います。古典派の最大の楽器編成、楽器間の移り変わりや和音の構成、管弦楽がなせる表現力のバイブルと言えます。
この曲は面白いので是非聞いてほしい曲です。

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Artists: Mirijam Contzen, Herbert Schuch, WDR Sinfonieorchester Koln, Reinhard Goebel
Label: Sony, DDD, 2019
Order number: 9629789
Release date: 29.5.2020
Series: Beethovens Welt

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