坂本龍一│ 音を視る 時を聴く
坂本龍一と言われてパッと思い浮かぶのは、姉がピアノで弾いていた『戦場のメリークリスマス』印象的な旋律が何度も繰り返される映画音楽で、とても美しく、ピアノの音ってなんて綺麗なんだろうと思い自分でも練習するようになった。
坂本龍一の作品は、流れるような美しい旋律が多く、雨の音や、自然の中で聴こえてくる音を連想させる印象がある。音がスッと自分の中に浸透していくような心地よさがあり、曲を聴く度に好きだなと思った。
この展覧会を見つけ、生前から坂本龍一が深く関心を持っていた『音』と『時間』について表現された作品があると知り、素直に行ってみたいと思った。
『TIME TIME』時間とは何か、という問いを夢の中で表現した作品で、「生」と「死」についても考えさせられる。時間は平等に流れているのに、人によって長い、短いの感覚は違う。この作品は、自分自身が時間をどのように捉えてるのか、俯瞰で考える事のできる作品だと感じた。
『LIFE-fluid,invisible,inaudible…』部屋に入ると雨の音。寒々とした灰色と、足元には水溜まり。室内なのに寒さを感じた。音と色と映像で、こんなにも予測のできない流動的なものを表現できるのかと驚いた。
『LIFE-WELL TOKYO 霧の彫刻』前が見えない濃霧
どこに何があるか分からない中を歩き、だいぶ近くまで寄らないと人にも気づかない。見えないからこそ感覚が研ぎ澄まされるような、今までに体験した事のない新しい感覚があった。
この他にも合わせて全12作品、どれも受け取り側に委ねられているような作品だと感じた。観る人によって全く違うものに映り、結果として自分自身と向き合う時間になっていた。日常生活で無意識に流れている事を、意識的に受け止める事のできる時間だったように感じる。