見出し画像

味のしないキスばかり


いつだって 二人きりの夜の路地だった

いつだって 秘密が多過ぎた僕らだから

生まれたての赤子の脇を抱えるみたいに

僕の両手が君のうなじを静かに支える

いつだって 傾けるのは僕の役目だった

いつだって 目を早く閉じ過ぎる君だから

紅く染まる頬に弧を描く睫毛を見つめ

かじかむ手のひらが君の体温に溶けていく

刹那の永さと近づく勇気を君は知らない

味のしない愛に惑星は自転を止める

いつだって 喋り出すのも僕の仕事だった

いつだって 街灯を見つめ頷くだけの君だから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?