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【企業経営理念#18】ドメインとは
ドメイン
前回は、経営戦略の概要について触れました。
今回からは、複数回にわたって、” 企業戦略(成長戦略) ”についてまとめていきます。
その中でも今回は、” ドメイン ”についてです。
ドメインの概要
企業戦略を考える上で、 ドメインは非常に重要な概念です。
ドメインとは、大きく2つに大別でき、
企業ドメイン:企業全体が活動する領域であり、存在意義や社会における役割を示す。長期的な視点で設定される。
事業ドメイン:企業が個々の事業で活動する領域であり、企業ドメインよりも具体的な範囲で、市場や顧客、製品・サービスを定義する。
この2つの視点からドメインは設定されます。
企業ドメインは、事業ドメインよりも上位の概念であり、事業ドメインは企業ドメインの範囲内で設定されます。
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事業ドメインは具体的に、
誰に (Who):顧客
何を (What):ニーズ
どのように (How):技術
という3つの要素で定義され、
これらの要素を組み合わせることで、さまざまな事業ドメインを定義することができます。
例えば、
「若者向けのファッションアイテムを、ECサイトを通じて販売する」
「高齢者向けの健康食品を、訪問販売で提供する」
「ビジネスマン向けの語学教育を、オンラインで提供する」
など
企業は、自社の強みや弱み、機会や脅威を分析し、どのドメインで事業を行うか を決定していきます。
「モノ」と「コト」で考える事業ドメイン
従来、多くの企業は「モノ」を中心とした事業ドメインを展開してきました。良い製品を作って、より多くの人に買ってもらう。これが、事業の成功における基本的な考え方でした。
しかし、現代社会では、顧客のニーズは多様化し、「モノ」だけでなく「コト」への需要が高まっています。
「コト」とは、製品やサービスを通じて得られる体験や満足、価値を指します。
例えば、スターバックスは、単に「コーヒー豆」という「モノ」を販売しているのではなく、「くつろぎの空間」や「特別な時間」といった「コト」を提供することで、顧客に支持されています。
このように、「コト」を意識した事業ドメインを設定することで、企業は以下のようなメリットを得られます。
顧客との繋がり強化:「コト」を通じて、顧客とエモーショナルな繋がりを作り、 ロイヤリティを高める。
競争優位の構築:「モノ」は模倣されやすいが、「コト」は独自の体験を提供することで、 差別化 を図りやすくなる。
収益性の向上:「コト」に価値を感じた顧客は、 より高い価格を支払う意欲が高まりやすくなる。
新たな市場の創造:「モノ」中心の既存市場では競争が激化しているが、「コト」を中心とした新しい市場を創造することができる。
事業ドメイン設定のポイント
顧客視点:顧客が本当に求めている価値は何かを徹底的に分析する。
独自性:他社にはない独自の価値を提供できるドメインを設定する。
将来性:将来的に成長可能性の高いドメインを選択する。
社会性:社会に貢献できるドメインを設定する。
「モノ」と「コト」を戦略的に組み合わせることで、顧客に新たな価値を提供し、 持続的な成長を実現する事業ドメインを構築することができます。
ドメイン設定の重要性
適切なドメインを設定することは、企業の成功を左右する重要な要素となります。
経営資源の集中:適切なドメインを設定することで、限られた資源を重点的に投入でき、効率的な事業運営を行うことができる。
競争優位の確立:自社の強みを活かせるドメインを選択することで、競争優位を築き、収益性を高めることができる。
市場機会の獲得:成長可能性の高いドメインに参入することで、新たな市場機会を獲得することができる。
リスクの低減:リスクの高いドメインへの過度な依存を避けることで、 事業の安定性を高めることができる。
ドメイン設定のフレームワーク
ドメインを設定する際には、以下のフレームワークが有効的です。
※それぞれのフレームワークについては、別記事で解説しているので、確認してみてください。
3C分析:
顧客 (Customer): ターゲット顧客、ニーズ、購買行動など
競合 (Competitor): 競合企業、市場シェア、競争優位性など
自社 (Company): 強み、弱み、経営資源、組織能力など
政治 (Politics): 政策、法規制、政治的安定性など
経済 (Economy): 経済成長率、金利、為替レートなど
社会 (Society): 人口動態、ライフスタイル、価値観など
技術 (Technology): 技術革新、IT、AIなど
強み (Strengths)
弱み (Weaknesses)
機会 (Opportunities)
脅威 (Threats)
バリューチェーン分析:
企業の活動を 主活動 と 支援活動 に分類し、 value creation のプロセスを分析する。
ドメイン設定の具体例
Amazon:
初期:オンライン書店という限られたドメインに集中。
現在:Eコマース、 クラウド コンピューティング、デジタルコンテンツなど、多様なドメインに事業を拡大。
Apple:
初期:パーソナルコンピュータという限られたドメインに集中。
現在:パソコンからスマートフォン、ウェアラブルデバイス、音楽配信など、多様なドメインへと事業を拡大。
ドメインの変更
上記の具体例のように、
企業は、環境変化や企業成長に合わせて、ドメインを変更することがあります。
ドメインの拡大:新規事業への参入、新市場への進出など。
ドメインの縮小:不採算事業からの撤退など。
ドメインの変更:コアビジネスの変更など。
まとめ
今回は、ドメインについてまとめました。
ドメイン設定は、企業戦略の基盤となる重要なプロセスです。
企業は、適切なドメインを設定することで、限られた資源を有効活用し、競争優位を築き、持続的な成長を実現することができます。
次回は、製品=市場マトリクスについてです。
復習問題
問題1:穴埋め問題
企業全体が活動する領域は、( ① )と呼ばれる。
企業が個々の事業で活動する領域は、( ② )と呼ばれる。
従来の「モノ」中心の考え方に対し、現代社会では「( ③ )」への需要が高まっている。
「コト」とは、製品やサービスを通じて得られる( ④ )や( ⑤ )、価値を指す。
問題2:正誤問題
企業ドメインは、事業ドメインよりも下位の概念である。( ○ / × )
事業ドメインは、企業ドメインの範囲内で設定される。( ○ / × )
「コト」を意識した事業ドメインを設定することで、顧客ロイヤリティを高めることができる。( ○ / × )
ドメイン設定は、企業の成功を左右する重要な要素ではない。( ○ / × )
問題3:組み合わせ問題
次の用語と説明を正しく結び付けてください。
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問題4:記述問題
事業ドメインを定義する3つの要素を挙げ、それぞれ説明してください。
「コト」を意識した事業ドメインを設定するメリットを3つ挙げてください。
ドメイン設定の重要性を4つの観点から説明してください。
ドメイン設定に有効なフレームワークを3つ挙げてください。
企業がドメインを変更する理由を説明してください。
問題5:多肢選択問題
以下のうち、事業ドメイン設定のポイントとして適切なものをすべて選びなさい。
a. 顧客視点 b. 独自性 c. 価格競争 d. 将来性 e. 社会性
問題6:記述問題
ある旅行会社が、事業ドメインを設定する際に、「コト」という視点をどのように取り入れることができるでしょうか? 具体的な例を挙げて説明してください。
問題7:記述問題
ある家電メーカーが、ドメインを拡大する際に、どのような点に注意すべきでしょうか? 具体的な例を挙げて説明してください。
問題8:記述問題
Amazonが、オンライン書店から多様なドメインに事業を拡大できた理由を、あなたの考えを述べてください。
問題9:記述問題
ドメイン設定において、「経営資源の集中」が重要である理由を説明してください。
問題10:記述問題
ドメイン設定において、「リスクの低減」をどのように実現できるか説明してください。
解答
問題1
① 企業ドメイン
② 事業ドメイン
③ コト
④ 体験 ⑤ 満足
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