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【財務・会計】生産性分析(労働生産性と資本生産性)

生産性分析


生産性分析とは、企業が投入した資源(インプット)に対して、どれだけの成果(アウトプット)を上げているのかを測る分析手法です。企業の効率性を評価し、改善点を特定するために役立ちます。


生産性を計算式に落とし込むと以下のようになります。

生産性 = 成果(アウトプット) / 投入した資源(インプット)

この式に着目すると、生産性を向上・改善させるためには、「インプットを増やさずにアウトプットを増やす」か「アウトプットを増やさずにインプットを減らす」必要があることが分かります。

加えて、企業の資源はヒト・モノ・カネであり、これら資源を大別すると、労働力(ヒト)と資本(モノ・カネ)に分けられます。

そのため、生産性の指標として重要になるのが、労働生産性資本生産性です。



労働生産性

労働生産性とは、従業員一人ひとりがどれだけの成果(付加価値⁽¹⁾)を上げているかを表す指標であり、企業の付加価値額を従業員数で割ったものです。
1)付加価値:企業がその活動を通して新たに生み出した価値のこと。簡単に言うと「買ったもの」と「売ったもの」の差。

計算式

労働生産性 = 付加価値額(アウトプット) ÷ 従業員数(インプット)

さらに、付加価値額を売上高に占める付加価値の割合とみなすことで、以下のように式変形することもできます。

労働生産性 = (付加価値額 ÷ 売上高) × (売上額 ÷ 従業員)
=付加価値率 × 従業員1人当たり売上高

労働生産性を向上させるには、従業員の能力向上や業務効率化といった直接的なアプローチだけでなく、設備投資による間接的なアプローチも必要です。

これを説明するために、労働生産性を労働装備率設備生産性に分解して考えてみましょう。

労働装備率とは、従業員一人当たりが使用できる設備の割合を表す指標です。

労働装備率 = 有形固定資産 ÷ 従業員数

設備生産性とは、設備がどれだけの付加価値を生み出しているかを示す指標です。

設備生産性 = 付加価値 ÷ 有形固定資産

そして、これらの指標と労働生産性の関係は以下の式で表されます。

労働生産性 = 労働装備率 × 設備生産性

つまり、労働生産性を向上させるには、

  1. 労働装備率を上げる:従業員一人当たりの設備を増やすことで、より効率的に作業できるようになり、労働生産性が向上。

  2. 設備生産性を上げる:設備の性能向上や稼働率向上により、設備から生み出される付加価値を増やすことで、労働生産性が向上。

という2つのアプローチがあることが分かります。

例えば、工場で働く従業員一人に一台ずつ高性能な工作機械を導入すれば、労働装備率が向上し、従業員一人当たりの生産量が増加します。また、既存の設備を最新のものに更新したり、適切なメンテナンスを行うことで設備の稼働率を向上させれば、設備生産性が向上し、同じ労働時間でより多くの製品を生産できるようになります。

このように、労働装備率と設備生産性は、労働生産性向上のための重要な要素となります。設備投資の効果を最大限に引き出すためには、これらの指標を意識し、適切な設備投資と運用を行うことが重要です。

補足

  • 労働装備率は、従業員一人当たりの設備投資額を表す指標とも言えます。

  • 設備生産性は、設備の効率性を表す指標とも言えます。

  • 労働生産性を向上させるには、労働装備率と設備生産性のバランスが重要です。

  • 中小企業診断士資格では、人件費に着目した労働生産性の式も理解しておく必要があります。

    • 労働生産性 = (人件費 ÷ 従業員数) ÷ (人件費 ÷ 付加価値額)
      = 従業員1人当たり人件費 ÷ 労働分配率




資本生産性

資本生産性とは、企業が保有する資本(お金や設備など)をどれだけ効率的に活用して、どれだけの付加価値を生み出しているかを示す指標です。
簡単に言うと、「使っているお金や設備」に対して「どれだけの価値を生み出せたか」 を表します。つまり、上記の設備生産性と同じ意味合いを持ちます。

計算式

資本生産性 = 生産量 ÷ 有形固定資産
= 生産量 ÷ (有形固定資産 - 建設仮勘定) 
  • 有形固定資産は、土地、建物、機械設備などであり、建設仮勘定⁽²⁾を引いたものが用いられることもある。
    2)建設仮勘定:自社で建設・製作している建物や設備など、まだ完成していない有形固定資産にかかった費用を一時的に計上する勘定科目のこと。つまり、完成前の資産を表すもの。


資本生産性を高めるためには、以下のような手法が必要です。

  • 設備の稼働率向上: 設備を効率的に活用することで、より多くの生産量を上げる。

  • 設備の更新: 最新の設備を導入することで、生産効率を向上させる。

  • 無駄な資産の削減: 使用していない資産を売却したり、リースに切り替えることで、資本投入量を減らす。

  • 高付加価値商品の開発: 高価格で販売できる商品を開発することで、付加価値を高める。




生産性分析を行う上での注意点

  • 生産性を測る指標は、業種や企業の特性によって異なります。適切な指標を選択することが重要です。

  • 生産性分析は、あくまでも現状を把握するためのツールです。分析結果を基に、具体的な改善策を実行することが重要です。

  • 生産性向上を追求するあまり、従業員の負担が増加したり、品質が低下したりすることがないように注意が必要です。




まとめ

労働生産性と資本生産性は、企業の効率性を測る上で重要な指標です。これらの指標を分析することで、企業の強みや弱みを把握し、改善策を検討することができます。

生産性分析は、継続的に行うことが重要です。定期的に分析を行い、PDCAサイクルを回すことで、企業の生産性を向上させることができます。

復習問題(計算問題)

問題1:労働生産性

ある企業の従業員数は100人で、付加価値額は8,000万円です。この企業の労働生産性を計算してください。

問題2:労働装備率と設備生産性

ある工場では、従業員50人で、1億円分の工作機械を導入し、年間2億円の付加価値を生み出しています。

(1) 労働装備率を計算してください。
(2) 設備生産性を計算してください。
(3) 労働生産性を計算してください。

問題3:資本生産性

ある企業は、5億円の有形固定資産を保有しており、そのうち1億円は建設仮勘定です。この企業の年間売上高は10億円です。建設仮勘定を控除した資本生産性を計算してください。

問題4:労働分配率

ある企業の従業員数は200人、人件費の合計は1億2,000万円、付加価値額は3億円です。この企業の労働分配率を計算してください。

問題5:従業員1人当たりが生み出す付加価値

従業員1人当たり人件費が600万円、労働分配率が40%の企業があります。従業員1人当たりが生み出す付加価値を計算してください。




解答

問題1

労働生産性 = 付加価値額 ÷ 従業員数

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