【企業経営理論#28】競争地位の4類型
競争地位の4類型
今回は、” 競争地位の4類型 ”についてです。
競争地位の4類型とは、アメリカの経営学者フィリップ・コトラーが提唱した、市場における企業の相対的な位置づけを4つのタイプに分類したものです。
それぞれのタイプの特徴を理解することで、企業は自社の現状を把握し、適切な戦略を策定することができます。
4つのタイプ
リーダー
業界内で市場シェアで1位の企業。
豊富な経営資源と強力なブランド力を持つ。
市場に大きな影響力を持ち、価格や製品のトレンドを作ることができる。
戦略:市場シェアを維持・拡大するための戦略をとる。
市場拡大:潜在顧客にアプローチする、顧客のニーズを掘り起こして新たな需要を生み出す、顧客の製品使用頻度を高めるプロモーションを行うなどして、市場のパイを拡大する。
非価格対応:高品質な製品・サービスを提供する、強力なブランドイメージを構築する、新製品や新技術を開発するなどして、価格以外の要素で競争することで、価格競争に巻き込まれることを回避する。
同質化:チャレンジャーが差別化戦略をとってきた場合、自社の経営資源を活用して、チャレンジャーの製品・サービスを模倣し、差別化効果をつぶす。
最適シェアの維持:市場シェアが過度に高まると、独占禁止法に抵触する可能性や、経営の非効率性が高まるなどのリスクが発生する。そのため、市場シェアを一定のレベルに維持することを目指す。
例:Google (検索エンジン市場)、トヨタ自動車 (自動車市場)
チャレンジャー
業界内で市場シェアで2位以下の企業。
リーダーを目標に、積極的に攻勢を仕掛ける。
戦略:リーダーとの差別化を図り、顧客を獲得する。
攻撃目標の明確化:リーダーか、同規模企業か、弱小企業か、など、メリットデメリットを評価して、対象を明確にする。
攻撃方法の選択:製品力や価格などで正面から挑むか、リーダー企業が手を出していない顧客をターゲットにするか、新技術の導入で優位性を覆すか、など。
専門化による差別化:特定の分野に特化し、専門性を高めることでリーダー企業と差別化する。
例:Pepsi (清涼飲料市場)、Samsung (スマートフォン市場)
フォロワー
リーダーやチャレンジャーの戦略を模倣する企業。
独自性は低く、価格競争に巻き込まれやすい。
戦略:リーダーやチャレンジャーの成功事例を参考に、リスクを抑えながら安定的な収益を確保する。
模倣:リーダー企業や他チャレンジャー企業の成功事例を模倣することで、リスクを抑制しながら、市場シェアの獲得を目指す。
専門化:特定の顧客セグメントやニッチ市場に特化し、差別化を図る。
コストリーダーシップ:徹底的なコスト削減によって、低価格を実現し、価格競争力を高める。
提携:ほかの企業と提携し、資源やノウハウを共有し、競争力を強化する。共同開発や販売提携など。
ニッチャー
特定の顧客segmentやニッチ市場に特化する企業。
専門性が高く、顧客ロイヤリティが高い。
戦略:特定の市場で高いシェアを獲得し、独自の価値を提供することで収益を上げる。
市場の深耕:既存のニッチ市場を深く分析し、顧客ニーズを徹底的に把握することで、顧客満足度を向上させる。
市場の拡大:関連する市場にも進出することで、事業拡大を目指す。
多角化:ニッチ市場での成功を基盤に、新事業に参入し、事業を多角化させる。
差別化:大企業の参入や競合の参入から、自社のニッチ市場を守るための差別化。
例:Ferrari (高級スポーツカー市場)、 GoPro (action camera 市場)
まとめ
今回は、競争地位の4類型についてまとめました。
競争地位の4類型は、企業が自社の地位を把握し、適切な戦略を策定するためのフレームワークです。
しかし、市場は動的に変化するため、現状に満足することなく、常に競争環境を分析し、戦略を見直し ていくことが重要です。
次回からは第3章 組織についてになります。
復習問題
問題1:穴埋め問題
市場シェアで1位の企業は、( ① )と呼ばれる。
リーダーを目標に、積極的に攻勢を仕掛ける企業は、( ② )と呼ばれる。
リーダーやチャレンジャーの戦略を模倣する企業は、( ③ )と呼ばれる。
特定の顧客segmentやニッチ市場に特化する企業は、( ④ )と呼ばれる。
問題2:正誤問題
リーダーは、価格や製品のトレンドを作ることができる。( ○ / × )
チャレンジャーは、独自性が低く、価格競争に巻き込まれやすい。( ○ / × )
フォロワーは、リーダーとの差別化を図り、顧客を獲得する。( ○ / × )
ニッチャーは、特定の市場で高いシェアを獲得し、独自の価値を提供する。( ○ / × )
問題3:組み合わせ問題
次の競争地位のタイプと、具体的な戦略を正しく結び付けてください。
問題4:記述問題
4つのタイプのそれぞれの特徴を説明してください。
リーダーが市場シェアを維持・拡大するための戦略を3つ挙げてください。
チャレンジャーがリーダーとの差別化を図るための戦略を3つ挙げてください。
フォロワーが安定的な収益を確保するための戦略を3つ挙げてください。
ニッチャーが独自の価値を提供するための戦略を3つ挙げてください。
問題5:多肢選択問題
以下のうち、リーダーの戦略として適切なものをすべて選びなさい。
a. 市場拡大 b. 攻撃目標の明確化 c. 非価格対応 d. 模倣 e. 最適シェアの維持
問題6:多肢選択問題
以下のうち、チャレンジャーの戦略として適切なものをすべて選びなさい。
a. 市場拡大 b. 攻撃目標の明確化 c. 専門化 d. 模倣 e. 提携
問題7:多肢選択問題
以下のうち、フォロワーの戦略として適切なものをすべて選びなさい。
a. 非価格対応 b. 模倣 c. 専門化 d. コストリーダーシップ e. 提携
問題8:多肢選択問題
以下のうち、ニッチャーの戦略として適切なものをすべて選びなさい。
a. 攻撃目標の明確化 b. 市場拡大 c. 多角化 d. 差別化 e. 提携
問題9:記述問題
ある飲料メーカーが、チャレンジャーとして、リーダーであるコカ・コーラに対抗するために、どのような戦略をとるべきでしょうか? 具体的な例を挙げて説明してください。
問題10:記述問題
ある中小企業が、ニッチャーとして、特定の市場で生き残っていくためには、どのような点に注意すべきでしょうか?
解答
問題1
① リーダー
② チャレンジャー
③ フォロワー
④ ニッチャー
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?